朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

「品格ブーム」再び

 ほぼ一年ほど前からのことですが、「品格」という言葉が私の頭の中に居座っています。政治家や高級官僚、一流企業に大学、大学病院などの不祥事に加えて、各テレビ局が競って取り上げたスポーツ界のパワハラ問題などが原因です。

 以前にも「品格ブーム」がありました。何年前だったか調べてみますと、2005年11月20日に出版された『国家の品格』(藤原正彦著)が最初でした。読んだ記憶はありませんので感想を口にすることはできませんが、この作品が火付け役となって「品格ブーム」が起こりました。

 以後、『女性の品格』(坂東眞理子著)や『男の』『親の』『会社の』『文章の』と、品格本のゴールドラッシュが続くわけですが、パソコン検索の結果、ざっと数えただけで20に余る品格本が出版されています。

 その中には『不倫の恋』とか『腐女子』とか『猫の』とか、品格とどんな関係があるのか意味が分からない作品も含まれているのは、ご愛敬というものかもしれません。

 『横綱の品格』というのもありました。調べてみますと、書いた人は双葉山です。この不世出の横綱双葉山」の記録、69連勝というのは未だに破られていません。「えッ?」と思って調べてみますと、『相撲求道録』を改題改訂したもの、とありました。

 『下着の品格』というのもありました。本の帯に「これが最後の品格本」とありました。最後だったかどうか、そこまでは調べませんでした。

 『議員の品格』の帯には、「ラストメッセージ」とあり、続けて「地に落ちた議員の『品格』」とありました。

 「なるほど」、と私の疑問は解けました。現在の世相を見るにつけ、なぜ再び「品格本」ブームが起こらないのか不思議に思っていたからです。誰か、腕に覚えのある人が現れて、例えば『首相の品格』なり『財務大臣の品格』なり『女性閣僚の品格』なり、また、『アメリカンフットボールコーチの品格』『日本ボクシング連盟会長の品格』などなど、ひとつひとつ数えれば枚挙に暇がないほどの「品格本」が書けるだろうに、一躍お金持ちになれるよ、と思ったからです。

 しかしそれは私の思い違いでした。『議員の品格』の帯に「ラストメッセージ」とあったように、「品格」はその時すでに息絶え絶えの瀕死状態だったのです。

 ブームが去って10年以上経過した今、「品格」は絶滅しました。「品格」に興味を示す者はいなくなったのです。どこかで生き延びていればいいのですが。