朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

気分はインディアン

 おれは角ハンドルのオート三輪の操縦に魂を奪われていたのだろうか? いや、そんなことはないはずだ。とはいっても、何も憶えていないのだ。この角ハンドルのオート三輪を借りたガソリンスタンドをセコ発進したことは憶えているが、そのあとの記憶がまったくない。尻池二丁目の交差点を東へ、この国道二号線を、おれはおれの住まいのある西宮へ向かったのは記憶してるが、尻池二丁目の交差点からすぐゆるやかな上り坂になるオーバーブリッジを登って下りたことも、山陽本線兵庫駅」に近い交差点を通過したことも、左折すればその昔、三角公園内に洋画専門の三本立て映画館があって、ここでよくジョン・フォードの『荒野の決闘』など観たのだが、またその交差点を通過したあとの交差点では、左折すれば「新開地本通り」、通りを挟んで多くの映画館や飲食店、「トシヤ」という食堂のまっくろけのソバ焼きは忘れられないが、また、この交差点を南へつまり海側へ右折すれば突き当たりに「川崎造船」の広大な敷地に油にまみれた工場が黒々と眺められたのに、そんなことも記憶にないのだ。