来年は後期高齢者
「いよいよ半年になったな」
「なにが? 半年てなに?」
「おれもいよいよ後期高齢者や」
「わたしはもーちょっとあるわ」
「ママンはおれとひとつ違いで、オマケに遅生まれやからな。コーキはコーキでも高貴やったらええけど、後期はなーんや、後ろから押されてよーな気ィすんな」
「気にせんかったらええねん」
「いや、言うてるけど、そないに気にしてるわけやないけどな」
「そやろ。それでえーねん」
「70歳から75歳までを前期高齢者とするやろ」
「そーゆーことなん?」
「いや、知らんけどな。たとえばのハナシや。5年刻みにどない名前をつけるか考えてみたんや」
「おとーさんもヒマやな」
「くだらんことでもえーから、自分のアタマで考える、これボケ防止の特効薬や。カネ一銭もかからんからな」
「おとーさん、なんかゆーと、カネカネやな」
「2000万円、これから積み立てて残さんとあかんからな」
「2000万! いつまで生きるつもりなん」
「1日1円づつ積み立てるとしてやな」
「もーええわ」
「ハナシもとに戻そか?」
「なんのハナシやった?」
「5年刻み」
「5年刻み?」
「そう5ねん刻み。70歳から80歳までを前期・後期とするやろ」
「その後は?」
「終期高齢者にするか、準備高齢者にするか。まあ、どっちでもえーけど、終活なんてのもあるから、80歳から85歳までを終期高齢者としよか」
「しよかて、おとーさん、そんなん勝手に決めてもえーの?」
「勝手に決めてもえーのて、アカンに決まってるやろ」
「そやろ? どないすんの?」
「国会開いて審議するんやないか。ヨトー、ヤトー集まってあーでもないこーでもないカンカンガクガク、お互いが屁理屈の並べおーて、最後は、ヨトーの賛成多数で、ここはどこの縄張りやろか?」
「ナワバリて?」
「ナワバリがあんねん。ザイムショーとか、コクボーショーとか。年寄りの問題やからコーローショーかな? 知らんけど。まあそんなんはどーでもえーわ。そのタントー大臣が高いとこからアタマ下げて一件落着、そんなんで1日、3億らしいで。知らんけど」
「おとーさん、おとーさんがゆーてんの、どこからどこまでがホンマなん?」
「ゆーてるおれも出任せやからな。わからんわ」
「よーゆーなー。あきれるわ」
「けどテレビで、『人生100年』なんてゆーてるからな。決めとかんと」
「勝手にしー」
「75から80までを終期高齢者とするやろ。80から85までをなんにしとろ?」
「わたしに訊かんとって」
「もーそろそろ高齢者か?」
「わたしのカオ見て、なんやのん?」
「いやいや、考えとんねや。次は85から90か。これなあ、前が、もうそろそろやろ。なんにしたろー。ツーアウト、ツーストライク高齢者はどないかな?」
「訊かんとって、言うてるやろ。あきれるわ」
「ツーアウトツーストライク高齢者か。まーええか。次は90から95か。もーここまで生きたら、コワイもんなしか? というても、それぞれやからな。けっこーまだ、子供でも作ろかーいうヒトもいてるかもしれんからな」
「なにをヒトリで、ゴチャゴチャ言うてんの」
「そや。これにしよ」
「なに?」
「オーイ、船が出るぞー高齢者や」
「意味わからんわ」
「三途の川の渡し船や。これに乗り遅れたら、自分で泳いであの世まで行かんならん」
「泳がれんもんはどーすんのよ? そーか! 船は次々でるから大丈夫か」
「そーはいかん。そんな単純なもんやないで、あの世は」
「意味わからんわ。よーついていかんわ、アタマ」
「そや! えーの思いついた。思いついた言うてもおれのもんやないけどな」
「なんやのん?」
「95から100までやで。閉店ガラガラ高齢者や。どやえーやろ?」
「どこがえーの。疑うわおとーさんのアタマ」
「けどオモロイなー。かたほーで『人生100年』言うかと思うと、かたほーでは『後期高齢者』いうてみたり、死ぬ準備しっかりせーよで『終活』言うてみたり、世の中ヘイワ、アカシのたこ焼きやな」
「死ぬまで死なんわ、おとーさんは」