おしんとなつ
「えらい違いやな」
「えらい違いやね」
「15分15分で、こないに違うか」
「ほんまやね。時代がちゃう、言うてられへんな」
「関東大震災の後、東京からダンナの郷の佐賀についていった『おしん』とそのあと続けて放映の『なつ』、片方が姑や小姑にこれでもかこれでもかいうくらいいじめられるのに、なつのほうは至れり尽くせり、ぼた餅の上に砂糖かけたような待遇の違い、15分違うだけでこの差はなんやろいうくらい違うんやから笑うな」
「まあ言うても、ドラマやからね」
「そやな。ドラマやからな。おれがきゃんきゃん言うても、NHKとしちゃ思うツボかもしれんな」
「そうやて、おとーさん。おもろいなー言て、観てたらええねん」
「けど、おしんを目の敵みたいにいじめるダンナの母親役、高森和子、ええ女優さんやな。もうだいぶん昔、『けったいな人々』いうドラマがあったけどそのときのおばあさん役がよかったな。おじいさん役の西山嘉孝のしかめっ面の顔も、よう憶えてるわ」
「そんなドラマ、NHKでやってたん。観たかなあ、よう憶えてないわ」
「うん、やってた、仁鶴が主役でな、出てたんや。いまでも朝のドラマ、大阪で作るやつと東京で作るやつがあるけど、けど『けったいな人々』は夜の8時ごろからやってたように思うけどな」
「仁鶴? 笑福亭仁鶴?」
「そう、その仁鶴」
「それやったら、観たかもしれんわ。あんまりよう憶えてないけど」
「もういっかい、やって欲しいな、けったいな人々」
「あれっ、えらいことになってるで」
「なに?」
「おしんと仲のよかったあのおなじように開墾してたよその嫁さん、自殺したんちゃうか。野っ原でえらいことになってるで。明るう振る舞うてたけど、やっぱり辛かったんやな。おしんも見習わなあかん、言うてたけど、辛かったんやなあ、やっぱり。橋田壽賀子、目配りが尋常やないな」
「明日やな。どうなるやろ」
「あしたやな。おれ仕事やから、観といてな」