朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

セミの夢 2

「ママン、おはよー」

「おはよーさん」

「昨日、セミのハナシしよ思てママンと話してたら、知らんマにメジロ落としのハナシになってしもうて、わけわからん」

「べつにえやないの。仕事行くわけやなし。メジロ落としに、言うた?」

「ああ、トリモチで獲るんを『落とす』言うんや」

「そおなん? 『落とす』いうたら、ドラマなんか観てて、捕まったけどなかなか白状せん犯人を刑事が問い詰めて白状さすんを、『落とす』いうて聞いたことあるわ」

「ほんまやな。まあメジロ落とすんもあの手この手でだまくらかすんやから、おなじようなもんかも知れんな」

「トリモチで簡単に捕まるの?」

「いろいろやな。簡単に獲れるときと、なかなか誘いに乗ってこんときと、あるんや」

「そんなときはどーすんの?」

「ツバキの花をな、トリモチの横に刺しとくねん。ミツを吸いにくるんを誘ういうやつや。他にはな、カゴのメジロが日によってよー鳴く日と、ご機嫌斜めでなかなか鳴かん日があるんや。そんな時な、口笛でな、鳴きマネすんねん。こんな感じでな」

「へええ、おとーさん、うまいなあ」

「あかんねん、こんなんでは。これはな、子メジロの鳴き方や。子メジロはチイ、チイ鳴くんがセーイッパイで、サエズることはまだ無理やねん。ところがな、山行くとよー囀るやつがおんねん。メジロの達人。こんなんなかなか獲れんけどな。この口マネができるんが、センユウちゃんいうてな、駅長さんの息子。うまかったでー、口マネ」

「おとーさんもやってみてよ」

「な、あかんやろ?」

「難しそーやな」

「ママンやったら器用やから出来るで。やってごらん?」

「えーわ。ほんならセミのハナシに移ろか?」

「そやな。セミで最初に聞くんはマツゼミやな。4月の中ごろから5月いっぱいくらいやろか? あんまり知らんねん。スガタ見たことないからな。山の松林の高いとこで鳴いてるからな、声だけやねん。鳴き声はな、いまやから言えるけど、『耳鳴り』みたいな感じ。子供のころは耳鳴りなんか知らんからな。聞こえるんはジージージー言うだけで、捕まえてみよかーいう気は起きなんだな」