2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
「なにになるんやろな、新元号」 「ほんまやね」 「なにになると思う?」 「わかるわけないやろ」 「そーやけど、アタマんなかでは知らんまに考えてしまうんやな」 「おとーさん、なにか考えてんの?」 「いやいや、考えてるいうんは取り消すわ。頭文字のA…
「いよいよあしたやなあ」 「なにが?」 「新元号の発表」 「えッ? なに?」 「しんげんごう。わからんか?」 「ああそのこと。しんげんごうやろ。おとーさんの聞いてると、信玄公に聞こえるで」 「ああ、やっぱり直らんもんやなあ、熊本弁のアクセント」 …
「鳴った?」 「鳴った」 「止めてくれた?」 「止めた」 「何分やった?」 「見てない」 「だれか書いてたけど、みっつかよっつ、目覚まし用意してたらしいな」 「だれのこと?」 「イチロー」 「へえー、そうなんや」 「おれ、目覚ましが鳴るまえに、たい…
「おサムライだったのかとは知らぬヤツ」 「なにそれ?」 「川柳」 「川柳?」 「そう、川柳」 「どういう意味よ?」 「貴景勝、大関なったやろ」 「そやてねえ」 「テレビで観たやろ?」 「観た」 「協会から使者が来て、『謹んでお受けします』言うやろ。…
「チコちゃん風に訊いてみよっかなあ」 「なによそれ」 「ねえねえ、ママン、ビッグバンって知ってる?」 「知ってるよそれくらい。宇宙誕生のきっかけになった大爆発のことやろ」 「なんだ知ってたのか。つまんねえやつだなあ。フランス人なら別の答えが返…
「ママン! あれあれ、テレビテレビ」 「なんやのん、あわてて」 「ほら、お父さんが娘の部屋に入ったやろ」 「それがどないしたん?」 「娘、勉強机で居眠りしてるけど、バラバラに分解したカメラが机の上にあるやろ?」 「あのカメラ、お父さんが大事に使…
「こんな愉快なこと、久しぶりや」 「なんかええことあったん?」 「ああ、イッちゃんがな。ええこと言うた」 「イッちゃん? イッちゃんて、だれなん?」 「イッちゃん、知らんか? いまいちばん人気もんやで」 「だれなん? 知らんわ」 「イッちゃんいうた…
「若いなまだ、ハリソン・フォード。いま観ても面白いなインディ・ジョーンズ」 「おもしろいけど、むちゃくちゃやろ。あきれるわ」 「けど、よう考えるなこんなこと」 「ほんまや。あきれるわ」 「ヒットラーが出てきて、サインするいうんがケッサクやな」 …
「後悔のあろうはずない都構想」 「なによそれ?」 「イチローが言うたやろ、記者会見で」 「そんなこと言うてないやろ」 「都構想は言うてないけどな。うしろにいろいろくっつけたらおもろいかな、思て」 「アホなことやめときよ」 「なんでもくっつけたら…
「引退、やな」 「引退て? だれ?」 「イチロー」 「引退すんの? イチロー?」 「そう」 「どうすんの?」 「どうすんのて?」 「野球やめるんやろ?」 「いや、やめるいうても、現役を引退する、いう意味やで」 「現役引退か」 「そう、現役引退。あとコ…
「どうもいかん! 失敗作に思えてきた」 「なんの話?」 「映画、観たやろ?」 「最近、映画観てないよ?」 「テレビ、BSでやったん観たやろ」 「観たけど、なんの映画?」 「赤ひげ」 「観たよ。おとーさんも楽しみにしてたやないの」 「うん。そらそうや…
「いやあ、まいった。外れてもうてな」 「なに? 宝くじ? ケイバ?」 「そんなええもんとちゃうねや」 「なにが外れたん?」 「ママンといえども言いにくいな」 「それやったら最初から言わなんだらええのに。水くさいで」 「そやねん。水にかんけーあるん…
「なんでやろ? わからんな」 「なにが?」 「子供の自殺」 「そら、いろいろ事情があるんやろ」 「そらそうかもわからんけど、おれが思うのは、子供が自分の意思で自分の命を絶つという心理が理解でけへん」 「そら、おとーさん、『おれかて今の世の中に生…
「おとーさん! 観て観て! あのこあのこ」 「どれ?」 「ちょっと待ってよ」 「あのこやろ?」 「そうそう、あのこあのこ」 「大奥に出てたこ、知らん?」 「大奥、観てないからな」 「お坊さんとフリンしてな。幼なじみで、お殿様に知れて、お姉ちゃん自殺…
「おとーさん、どこ行ってたん? 遅かったやないの」 「駅前の銀行にな。足らん分入れとこか思て」 「なかったやろ?」 「うん、駅南に移転しますて、張り紙があった」 「そっち行ったん?」 「うん、そっち行ったんは行ったんやけどな、行く途中駅の改札の…
「おとーさん、あれ?」 「なに?」 「コイと違う?」 「どれどれ」 「あれ、あそこにおるやろ?」 「んー、ボラやな」 「ボラか」 「ボラや」 「コイ、死んでもうたな」 「死んでもうた」 「ひどいことするな」 「ほんまや、あきれるわ」 「上流で、間違う…
「おとーさん、なに考えてんの? 目の玉クルクルまわって、宇宙遊泳してるで」 「わかるか。宇宙のこと考えてんねん」 「ええ歳して、宇宙のことやなんて、1銭にもならんことを」 「考えるんはタダやからな」 「どんなこと考えてるん?」 「テレビでな、観…
「おとーさん」 「なに?」 「こわないの?」 「なにが?」 「そやから、こわないの? 訊いてんねん」 「そやから、なにが? 言うてるやろ」 「この歳になってこわないの? 訊いたら、わかるやろ?」 「わからんなあ?」 「しぬことやないの」 「なーんや、…
「40歳になったころのことやけどな」 「40歳? なにかあったん?」 「いや別に、ママンに告白するほどのことがあったわけではないけどな」 「40歳いうたら、もう30年以上も前の話やで」 「あのころ、駅まで15分ほど歩いて、電車通勤してたやろ」 …
「ママン、ええのがおった」 「なに?」 「いや、ええの見つけた、言うてんねん」 「なんのこと?」 「いま、世間的には人手不足いうてるやろ?」 「そうらしいな、知らんけど」 「『ネコの手も借りたいほどの』いうやろ。というて、ネコの手借りても、孫の…
「おじいさん、そこでなにしてんの?」 「星をな、観てんねや」 「見えるか?」 「あんまり観えんな」 「お月さん出てたら、見えにくいよ」 「お月さんは出てないけど、目ェ悪うなったんかな」 「いつまでもそこおったら風邪ひくよ。なか入ったら」 「昔は、…
「観た?」 「観た」 「最後まで?」 「最後まで」 「で、どやった?」 「まあまあ、面白かった」 「おとーさん、途中で寝てたやろ?」 「ああ、寝てた」 「起こしたんやけど、知ってるか?」 「ああ、言うてたな、『最後まで観らんと面白さはわからん』言う…
「ママン、目覚まし時計、鳴った?」 「さあ? 気づかなんだけど」 「寝る前に、6時に合わせてたんやけどな」 「6時? トイレにいったけど気づかなんだよ」 「おっかしいなあ? いま7時10分やろ。秒針も動いてるしな」 「普通に動いてる?」 「動いてる…
「おじいさん、お帰り」 「ただいま」 「どこ、行ってたん?」 「駅前の公園や」 「サクラはもう散ったやろ」 「あんた、この前もそんなこと言うてたで」 「そやったかな?」 「これからはツツジやな」 「あの公園にツツジあった?」 「公園にはないけど、目…
「おじいさん、お帰り」 「ただいま」 「どこ行ってたん?」 「駅前の公園で、日向ぼっこしてた」 「まだサクラ、咲いてた?」 「いやもう散って、青い芽が出てた」 「早いね」 「早い」 「まだ寒い日もあるんから、カゼひかんようにしてよ」 「ああ、まだパ…
「年寄りを大事にせー、いうんはな」 「ふんふん」 「老後、つまりあと何年生きるか、50年も60年も生きるわけやないけど、人生100年時代なんて脅しかけられると、『えらいこっちゃ、もっともっと節約せにゃあかん』てなわけで、財布のひもギュウッと…
「よかったなあ」 「よかった」 「死んだもんとばっかり思てたからなあ」 「生きてたんや」 「どこで生き延びてたんやろ」 「冬のあいだ、全然見なかったんで、あかんやろ思てたのに」 「すごい生命力やなあ」 「どこにおったんやろ」 「どこにおったんやろ…
「えらい借金やな」 「えーッ! おとーさん、なにやったん、わたしに隠れて、競輪競馬パチンコマージャン、おまけに株にまで手ェ出してるんと、ちゃうやろな?」 「よーけ言うたな。えらい信用ないねんな。まあ、しゃあないけど」 「どないなん?」 「おれの…
「あの、あれ、だれやったかいな?」 「だれ?」 「ほら、あの、あの男よ。もうええ歳やけど」 「だれよ?」 「ああもう、ここまで出てるんやけど、あのほら」 「おとーさんの知った人? わたし知ってる?」 「知ってる知ってる、向こうは知らん思うけど」 …
「出た?」 「出た」 「良かったね」 「うん、良かった」 「おとーさんは?」 「まだやねん」 「そう、出そうなん?」 「今んとこまだや」 「クスリ、のんだ」 「ゆうべな、寝がけにな」 「そしたら出るやろ」 「まあ、行ってみるわ」 「どやった?」 「ちょ…