私という人間
嘘をつく。でたらめを言う。悪ふざけもする。
だが何人かの友達はいる。だが信頼できる人間とは思われていない、と思う。たぶん当たっているだろう。
妻も子もいる。妻はフランス人だ。だから家では「ママン」と呼んでいる。
ママンが言った。
「おとーさん、6時半やで。7時になったら起きよか」
外はまだ暗い。5時半の間違いなのだ。といってたいした問題でもない。
「あ、しもた。今日は朝の仕事やったな。5時やのに遅れた」
「なに言うてんの。仕事は夜中で、今日は休みやろ」
「そうか、夜中が仕事やったか。間違いないな?」
「ぼけたらあかんで」
昨日書いたブログがまだ頭に残っている。
「桃太郎いうたら名前やろ。名字はなんやろ。浦島太郎は浦島が姓で太郎は名前やろ。あれなママン、まだだれも気付いておらんけどほんまは島太郎が名前で、浦いうんが名字なんや」
「そう?」
「ああ、ほんまや。むかし須磨におったことがあるやろ。住所が須磨浦通り、あの須磨浦の浦、ほんま言うたら名字も怪しい、島太郎がおったんはどこか知らんけど、須磨浦みたいに何々浦いうところがあってその浦におったんとちゃうか島太郎、そやないかとオレは思う」
「けどおとーさん、『むかしむかし浦島は、助けた亀に連れられて』言うて、唄うてるやろ」
「ああ、そら歌やからな。『むかしむかし浦は』言うたら唄いにくいやろ。というて『むかしむかし浦さんは』言うんもなんやおかしいはなー。それで仕方なしに浦島にしたんとちゃうか」
「ふーん」
「それとな」
「なに?」
「もひとつ疑問があるんや。桃太郎には太郎の上に桃がついてるやろ。金太郎にしてもそうや。太郎の上に金が乗っかってるのに、浦島太郎だけが太郎いうんはおかしいなー思うて考えてたら、そうや! と気付いたんや」
「なにを?」
「なにを? て、島太郎やないかということ。けど、金太郎や桃太郎の名字は付いてないけど、ねんやろ?」
「知らんの?」
「うん」
「桃太郎は、桃、太郎」
「ほれやったら、金太郎は金、太郎か」
「そうや」