西向きのベランダ
ある日。
「スズメ、どないしたんやろ? 今日はぜんぜん顔見せへんな。もう陽が射して、パン乾いてるで」
「朝から、パトロールしてたからな、カラス」
「それでか。どっかに隠れて警戒しとんねんな」
またある日。
「なん羽おる? 今日は早うから待ってはるで。速よパン粉撒いてやらんと。催促するんが1羽おるやろ」
「おるおる。網戸にしがみついて、キョロキョロこっち見てるわ」
「速よせえ、言うてんのかな」
「せやろか」
またある日。
「えらいようけ来たで。ケンカしたらあかんがな。そっちのほうもあるやろ。そっち行ったらええねん。がめついやつがおるやろ?」
「こいつこいつ。いつもや」
「いつもて、なんでわかるの?」
「髪の毛、1本だけ立ってるやろ。寝相が悪いんかな」
「顔洗うとき、カガミ見らんのかな」
またまたある日。
「何羽おった?」
「14羽」
「新記録やな」
「新記録」
「親子のも、おるんかな」
「おるかもね」
「羽根バタバタして、エサねだっとったのにな」
「もう親と一緒やから、どれとどれが親子かわからん」
「だれか、リーダーがおるんかな? 『あそこ行ったらくれるで』言うんが」
「風の便り、ちゃうの?」
「風の便り?」
「エサようけあるのに、取り合いしてケンカするやろ。その声聞いて、ほかのスズメも『なんやろな?』思て、飛んで来るやつ」
「なるほど」