朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

気分はインディアン

 出発だ。動き出した。エンジンの爆発音と振動が心地よい。ポンポンポンと、マッチ箱のような小型漁船に積んだ焼玉エンジンを思わせるリズムだ。変速機をコントロールするシフトレバーは一本の、直径1センチほどの鉄棒となっておれの左足のすぐ横の床面から延びていてその先端には樹脂製の球がついている。俗に「ダルマ」というやつだ。いよいよ発進というとき、おれはギヤをローへシフトして発進することはまずない。登りの坂道は別だ。横一文字が領域のニュートラルを、ひだり手のひらをダルマに軽く添えて確認する。ダルマを握ったりはしない。ダルマと繋がる細い鉄棒を中指とクスリ指のあいだに軽く挟むと、やさしくダルマを手のひらで包む。ニュートラルからセコ(2速)へレバーをシフトするには、ダルマを自分の身体のほうへ引き寄せグッとうしろへ引いてやる。これで、目には見えないが2速ギヤの歯車とシフトレバーの歯車が互いに噛み合いそのエネルギーがプロペラシャフトに伝わりタイヤへ回転をうながすという仕組みだ。