なんでやろ?
「なにが?」
「いや、気になってしょがない」
「だから、なんの話?」
「続けて観るからよけーそう思うんかな」
「だからァ、なんのことよ」
「どこが気になんのよ?」
「トーキョー出てきてるやろホッカイドーから」
「いまはな」
「時代でいうたら、昭和30年代の初めころや思うんやけど、えらいさっぱりしてるやろ服装が」
「だれの?」
「だれの? てママン、ふたりに決まってるやんか」
「ああ、ふたりな」
「広瀬すずともうひとりお母さん役、だれやったかな? 松阪慶子やないわ、広末でもないな、だれやったか? そや、松たか子や」
「マ、ツ、シ、マ、ナ、ナ、コ、 いっつも間違うやろ。ダンナさんはソリマチや」
「そうか、マツシマか」
「あのふたりの、どこが気にいらんの?」
「いやー、あのふたりが気にいらんわけやないねん」
「そしたら、なによ」
「まあ、アラさがしみたいになるけどな。『おしん』と続けて観てるからな。よけー目につくいうんか、カンにさわるんや」
「どんなとこよ?」
「感じへんか?」
「べつに」
「さっきも言うたけど、ホッカイドーからトーキョーやで。たぶん時代設定は昭和30年の初めころや思うけど。たぶん夜行列車やろ、15時間か20時間か知らんけどかけてトーキョーまで出てきて、何日おるか知らんけど、場面変わるごとに松たか子もなんとかすずも服装が替わってるやないか? どんな大きなボストンバッグ持ってきたんやホッカイドーから。そんなんがえらい気になって、ハラがタってしょがない。ママンは気にならんか?」
「べつに、そんな観方してないもん。そんなことよりひとつ注意しとくけどなおとーさん、なんべん教えても松たか子や言うやろ。たいがい覚えてな。松嶋菜々子。ダンナさんは反町隆史」
「どっちも松がついてるからやろか。言うてしまうんや」
「歳とった証拠やな、おとーさん。名前は覚えられん、ちょっとしたことでハラ立てる、電話では大っきな声出す、ウンコしてもトイレの水は流さん、と思うとカオ洗うたあとの水は出しっぱなし。テレビにモンク言うてるヒマがあったら自分のこと先に考えたら、どう?」