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「テレビ、観てたやろ?」
「観てた」
「意味わかった?」
「わからん」
「習ったやろ」
「憶えてるよ」
「わたしはあんまり」
「先生に言われたとおり丸暗記で、なーんとも思わなんだ」
「いまの塾の勉強とはぜんぜんちゃうんやろしな」
「そらあちゃうやろ」
「マイナスとマイナスとかけて、なんでプラスになるの? ちゅう話やったなあ」
「そうそう」
「先生がそのとき、これやからこうなるんやでと言うてくれたかも知れんけど、憶えてるんはマイナスとマイナスをかけたらプラスになる、いうことだけや」
「丸暗記やったらそうなるわな」
「そやろ。いまさらテレビで、こういうわけでこうなる言われてもなあ」
「わたしはどうでもええけど、おとーさんは気になる?」
「ああ、もやもやするなあ」
「あの話では、3掛ける3は9やろ」
「そうや」
「それやのにマイナス3とマイナス3を掛けても同じ9で、答えは一緒ということは、なんで?」
「そやろ? そやけどおれに訊かれても」
「なんでマイナスなんてややこしいこと言わんで、さざんが9やったら、さざんが9でええんちゃうの」
「さざんがきゅうか、昔、さざんかきゅう言う役者さんいてたなあ」
「なんの話?」
「いやあ、ママンが何べんもさざんが9言うんで思い出したんや」
「けったいなこと思い出すねんな」
「『機関士ナポレオンの退職』いう映画があってな。モリシゲが主役なんやけど、その上司役が山茶花究で、あのときええ役者やなあ思て、いまでも憶えてる」
「おもろい名前やな。どう書くの?」
「さざんかはあの椿みたいな花の、山とお茶の茶やろ。あとプラス花で山茶花や。きゅうは研究の究や」
「そういえば三吾十五いう漫才師もいてたやろ」
「いてたいてた。いまはコンビ別れして娘とコンビ組んでるな」
「ようやるな。ようやらんわ」
「好きやったらおもろいんやろな」
「あかんわ」
「はっぱむとしいう人もいてたな」
「はっぱむとし?」
「コンビでコントやってたように思うで」
「数字と関係あるの?」
「はっぱろくじゅうし、や」
「それで、なんでむとしなん?」
「ろくがむやろ、とがじゅうや。しはしや」
「わけわからん」
「わけわからんか。けど笑うやろ」
「うん、わからんけど笑う」