ひねるとじゃー
「ぜーたくやな」
「なにが?」
「そやからぜ-たくやな、言うてんねん」
「そやからなにがー言うてるやろ」
「ありがたい話やで」
「なんの話よ」
「お湯がでるやんかー」
「どこからー?」
「わからんか?」
「わからん?」
「顔洗うときお湯が出るやろ。ぜーたくな話やで。なみだ出そうになるわ」
「なにをおおげさなこと言うてんの」
「かまどでお湯わかしてたころ思い出してみィ。ありがとうて、なみだ出るわ」
「もうええ、言うてるやろ」
「ママン(妻)も経験あるやろ」
「なにがよ?」
「火ィ焚いて、お湯わかしたこと」
「あるけど、昔の話や」
「ありがたい思わんのか?」
「そら思わんわけやないけど、あんまり思たことないな。いまの子、そんなこと考えもせんで」
「そやろな。経験ないからな。経験あるから、ありがたい思うんやろな」
「そうや」
「おれらかて、いまの時代うまれとったら、親に『むかしはこうやったんやで』言われても、『ああそうか』でおしまいやもんな」
「こどものころ、ひねるとじゃー言うてた? 言うてたやろ?」
「ああ言うてた言うてた。まんじゅうのこと、おすとあんでる、言うてたか?」
「うん、言うてた言うてた」
「笑うな」
「うん、笑う」