続続 ??????・・・
「ママン、続きな」
「なんの?」
「きのうのやつや」
「きのうのやつって、なんやったっけ?」
「きのうのやつって、きのうのやつやんか」
「なんやったかなあ?」
「ほら、マイナスとマイナスを掛けると、いうやつ」
「おとーさん、まだこだわってんの、ええ加減にあきらめたらどう?」
「そう簡単にはあきらめへんで。継続は力なりや」
「なにがァ、下手な考えなんとか言うで」
「あれからずっと考えとったんや」
「ひつこいな、スッポンか」
「なんとでも言え。間違いやったんや」
「なにが間違いよ?」
「ママンから借金するというたとえ」
「フフン、あれかいな。あっというまのアウトー! やったな」
「今度はそうはいかんで。寝んとよう考えたからな」
「ご苦労なこっちゃな。一銭にもならんのに」
「ほっちっちーや。数学の先生に教えてもろうてたんを、うっかり忘れてたんや」
「数学の先生て、そんな人と付き合いあんの?」
「ほら、まだ元気なころ、通信制の高校に行ってたことがあるやろ。あのときの先生や」
「ああ、あのなんとかいう先生」
「そうそう、あの先生が教えてくれはったんはな、マイナスプラスのたとえに使うなら温度計がええ、言うてな」
「温度計?」
「そう、温度計。算数・数学の基本はなんやと思う?」
「基本? 基本なんてあんの?」
「そらあなんでも基本はあるんやろけど、おれもあっと思たで」
「なんのこと?」
「ゼロやて。これが基本になるんやて。知ってる人はなんで? って話やろけど、おれには勉強になったな」
「ゼロはええけど、あとはどないな話になんの?」
「うちにはないけど温度計、寒暖計いうんがあるやろ? そうそう、あの赤い色のついたやつ。あれ零度の目盛りがあって上がプラス、下がマイナスになってるやつ。天気予報なんかで札幌は今年もっとも寒い零下何度とかいうてるやろ。おれら零度になったら外に出る気ィせえへんけどな」
「また横道へそれそうになってんで」
「りょうか~い。それでな、マイナス2度にマイナス2度を足すと何度になる?」
「マイナス2度にマイナス2度足すんやから、マイナス4度? でええんやろ」
「そや、そういうことや。じゃあ、もう2度マイナス足すと? そやな、マイナス6度やろ。なあ、ここからが問題や。間違わんようにせんと、迷路や」
「なんやのん、たよんないなあ」
「しーッ、黙ってて。マイナス2度を3回やから、にさんがろくでマイナス6度と、ここまでは、これまでどおりで違うてない、な、そやろ?」
「わたしに訊いてどないすんの」
「黙っててて、言うてるやろ。ここからがいよいよ核心やで。なんでマイナスとマイナスを掛けるとプラスになるか? ちゅうことやな」
「勝手に納得して、わかってんのかいな」
「だあって! 言うてるやろ。あかん! 頭んなかで糸がもつれとる。ゴチャゴチャ言うからや。おっかしいなあ? 寝んと考えてたときはうまくいってたのに、ゴチャゴチャともう」
「なんや、わたしのせいかいな。今晩もうひと晩、徹夜するか」