2号
「おとーさん。テレビがなかったら死ぬやろ」とママン(妻)が言う。
「ああ、その通り」と私が応ずる。
「今際の際に、テレビ、テレビ・・・ああガックリてなことになるんとちゃうか」
「ああ、なるかもしれんな。本妻にお妾さん、ママンが本妻ならテレビは2号みたいなもんやな」
「いまやったら、私よりテレビのほうがええやろ」
「ええな・・・えええッ! なに言うてんねんな。あんたあってのテレビやがな」
てなわけで、テレビのお話。
笑うな、生命保険会社のコマーシャル。契約者から抽選で〇〇名様に神戸牛を500gなんやねんこれ。抽選かい!
「ママン、生命保険入ろうか。神戸牛くれるらしいで」
「そお、肉長いこと食べてないな。というて肉もらうために保険入るいうのもな」
「神戸牛、500gやで。盆暮れに食うてるオーストラリア産とはちゃうねんで」
「そうか、神戸牛やったら魅力やな。入ってもええな。いつ送ってくるの?」
「抽選で100名様やて。締め切りのこと、コマーシャルでなにも言うてないな」
「抽選!? 500g!? 抽選!!?」
「ママン、またCMや。番組の間にCMあったんが、いつの間にかCMの間に番組やるようになったな」
「番組作るんにカネかかるんやろ」
「そんなことあるかい。昼間の番組、ほとんど観たやつばっかりや。ちょっとトイレ行ってくるわ」
「あれッ! まだコマーシャルやってるやないか。長いコマーシャルやな」
「なに言うてんの。あんたがトイレ行ってるあいだに水戸黄門やって、そのあとのコマーシャルやないの」
「それやっら『この印籠が目に入らぬか!』終わったの?」
「おとーさん、あれが観たかったの?」
「そうや。あれが観とうて観てんねや」
「しょうもな」