あの話
「おとーさん、あの話どうなったん?」
「ああ、あの話なあ」
「今度は大丈夫や、あの人に頼んださかいな、大船に乗ったつもりで待っとれ言うて、わたしにまで偉そうにそっくりかえってたけど、なんや今日は、えらい浮かん顔してるやないの」
「ああ」
「ああ、やないで。待ってる人の身ィにもなってみィな」
「わかってる、わかってるて。ごちゃごちゃ言いな」
「ははーん、うまいこといかなんだんで、今度はあの人に頼もう思てるな?」
「なにが、えッ? なに? そないなこと、えッ、えッ? なんで? ということはですね。わたしはいっさい、なんで?」
「なんで? って、ほーれ見ィ、図星やろ。けどあの人はあかんで。もうあんたのこと、眼中にないからな」
「思てないよ、そんなこと」
「それやったら自分で話つけんかいな。男やろ。つけてるんやろ」
「なんやねん、その言い方は、おれをばかにして。やりゃあええんやろ、やりゃあ」
「そうそう、それでええねん。思い出すな、前にも、すぐにでも話つくみたいにそっくりかえってわたしに火ィ吹いてたけど、今度は大丈夫やな?」
「わかってるわい。わかってるに決まってるやろ」
「ははーん。今度はわたしに頼もう思てるな? あんたの頭んなか、手に取るようにお見通しやで。そうかいな、行ったろか? 話つけに」
「えッ? 行ってくれるか?」
「こりゃあ、あかんわ」