出た?
「出た?」
「出た」
「良かったね」
「うん、良かった」
「おとーさんは?」
「まだやねん」
「そう、出そうなん?」
「今んとこまだや」
「クスリ、のんだ」
「ゆうべな、寝がけにな」
「そしたら出るやろ」
「まあ、行ってみるわ」
「どやった?」
「ちょっとだけな」
「出んより、ええやん」
「そやな」
「出たかあ?」
「うん、出た」
「そうか、おれも出た。ゆうべ2錠のんだんが効いたんかな。最初は固かったんで痛かったんやけど、まあまあやった」
「おとーさん、出た?」
「まだや」
「わたし、出たよ」
「そうか、おめでとう。その気になったんで行ったんやけどな、5分座っててもあかんかったんであきらめたんや」
「わたしは割と順調やで」
「クスリものんでないのになあ」
「腸の働きが弱ってんのかな?」
「そやろなあ。若いときみたいにはいかんな。座るときにな、お願いすんねん『今日も宜しくお願いします』言うてな」
「ハハハハ、大変やな」
「自分のもんやのに、『今日のご機嫌はいかがでしょうか』言うて腰低うしてお世辞言うて、それでもあかんときはあかんし、汗かいて気張っても無視されることもあるんやけど、というて『出んなら出んでもええ! 勝手にせえ!』いうてドア蹴ってでてきても、あとでえらい目にあうんは自分やからな」
「えらいたいそうな話になったな」
「いやいや、それほど大事なことやろ」
「気持ちようにスッと出ることもあるやろ?」
「あるよ。そんときはご本体に向かって『ありがとうございました』いうて頭を下げて出てくるんやけどな」
「ふん、それで?」
「お礼です言うて、クスリ1錠のむんや。お礼肥みたいなもんや。笑うやろ」
「笑う」