ニッポン復活
「えらい借金やな」
「えーッ! おとーさん、なにやったん、わたしに隠れて、競輪競馬パチンコマージャン、おまけに株にまで手ェ出してるんと、ちゃうやろな?」
「よーけ言うたな。えらい信用ないねんな。まあ、しゃあないけど」
「どないなん?」
「おれのことやないよ。ニッポンのこと」
「ニッポンのことて、国債がどーのこーのいうあれ?」
「そうそう、あれあれ。いっせんちょー円超えてからも、歯止めかからん」
「そんなわけのわからん、どーもならんで、なんぼ考えても」
「わかってんねんけどな。国のえらいさんも、おれが生きてるあいだ、なんとかなりゃそれでええ、思てはるんやろな」
「そんなことないと思うけど。みんな大学出の、かしこい人ばっかりやないの」
「そやけど、ご覧のとおりのこのザマやがな」
「なんとかなるんとちゃう?」
「まあ、なんとかなるんは、なるんやろけど」
「ママンにやってもらおか?」
「わたしにィ?」
「そうそう。安い年金うまいこと手のひらで転がして、赤字国債発行せんと、健全家計うまいこと操ってるやないか」
「そんな言い方やめてよ。悪いことしてるみたいやないの」
「すまんすまん。年金安いんで、誤魔化してんねや」
「なんか、ええ方法ないの?」
「あんねや。持ってんねや」
「おとーさんが?」
「そうや」
「雨で、退屈してたんよ。聞くだけ、聞こ」
「ありがたいな。さすがはママン、フランス人だけのことはあるな」
「のーがきはええねん。はよゆい」
「年寄りを大事にせー、このひとことで、問題解決や」
「ほんまかいな。それで国債の借金がのうなって、ニッポンが復活する、いうの?」
「そやで。これ以外ほかにはない、なんていうんは言わんけどな」
「自信ないんやろ」
「あるとも言わんし、ないとも言わん」
「ええかげんなこと言いな。ははーん、わかった。自分が歳とったんで、それで、年寄り大事にせー、言うてるんやろ」
「ばれたか」
「やっぱりな」
「けど、それだけやないねんで。おれの頭んなかには、こうしてああしてこうすりゃこうなる、いうシナリオがあんねん」
「それやったらそれ言いな。退屈やから聞いたろ」
「いまはあかんねん」
「なんで?」
「原稿用紙2枚分、超えたからな」