巨頭会談
「おじいさん、お帰り」
「ただいま」
「どこ行ってたん?」
「駅前の公園で、日向ぼっこしてた」
「まだサクラ、咲いてた?」
「いやもう散って、青い芽が出てた」
「早いね」
「早い」
「まだ寒い日もあるんから、カゼひかんようにしてよ」
「ああ、まだパッチ2枚はいてる」
「尿漏れパンツは?」
「尿漏れパンツてあんた、人のシークレットばらさいでもええやないか」
「シークレットて、ここだけの話やないの、心配してるからやないの」
「ありがと」
「美空ひばりか」
「ベンチに腰掛けてたらな」
「なにかあったん?」
「子供がふたりな、小学校2年か3年くらいかな? 似たような顔やったんで兄弟かもわからん」
「知った子?」
「いや知らん子や。ちょっと離れてところでしゃがんで、なんかぼそぼそ話してるんや」
「聞こえた?」
「うん、だいたいな」
「どんな話やったん?」
「うん。トラちゃんがどうのこうの言うて、お兄ちゃんなんやろな、小さいほうの子ォに言うてんねや」
「ふんふん、それで?」
「子供やな、トラちゃんがビー玉50コやるから、プロ野球カード、それも滅多に手に入らん、ナガシマやオーのプラチナカード5枚くれ、言うてる、どないする? 言うてな、小っさいほうと商取引の交渉してんねや」
「えらい話になってきたな。それで?」
「とここで、水が入ったんや」
「なんやのん、水が入ったて。雨でも降ってきたん、ええ天気やのに」
「いや、そういう意味やないんや。その子ォらを知った人やろな、50年配のおばちゃんが通りかかってな」
「はあ?」
「『なんとかちゃんとなんとかちゃん、仲良うしてるか。あんたら兄弟やのにいっつもケンカしてるやろ、仲良うせんとあかんで』言うて、さっさと行ってもうたんや」
「なんとかちゃんとなんとかちゃんて、おじいさんあんた、名前聞いたんやろ?」
「ああ聞いたよ。なんやったかなあ? そうそう、結婚式のとき、新婦さんが頭にかぶるんがあるやろ?」
「ベールか?」
「いや、着物着て、カツラでかぶる、あれなんやったかな?」
「分金高島田やろ?」
「そうそうそれそれ」
「そうそうそれそれて、子供の名前となんかかんけーあんの?」
「ああ、子供の名前、ブンちゃんとキンちゃんや」
「なんやのん、おちょくってるんかいな」
「笑うやろ」
「笑われへん。それでどないなったん?」
「800字とうに超えた。しんどい。またあしたや」