朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

続 巨頭会談

「おじいさん、お帰り」

「ただいま」

「どこ、行ってたん?」

「駅前の公園や」

「サクラはもう散ったやろ」

「あんた、この前もそんなこと言うてたで」

「そやったかな?」

「これからはツツジやな」

「あの公園にツツジあった?」

「公園にはないけど、目の前に学習塾があってな」

「あんなとこに、そんなんあるの?」

「ああ、駅前は便利やからな。2つ、いや3つか、ビルがあるわ」

「儲かってんねんな」

「競争やからな。家ん中、なんやヒヤッとするんで日向ぼっこでも思うて行ったんやけど、外はもう日陰のほうがええな」

「これからは熱中症に気ィつけんとあかんな。尿漏れパンツ、まだあった?」

「なんやいな、急に」

「ちょっと髪染め買いに行くんで、ついでや思てな」

「まだしばらくは大丈夫や。これからすぐ行くの?」

「どこへ?」

「髪染め、行く言うたやろ?」

「いや、昼ご飯食べてからや。なんか買うて欲しいもんあるの?」

「いや、なにもない」

「お茶、淹れよか?」

「ああ、頼むわ。朝のままでええで。ああ、ありがと。ブンちゃんに会うたわ」

「ブンちゃんて、だれ?」

「憶えてないか。前に公園行ったときおった、兄弟のお兄ちゃんのほうや」

「ああ、小学生くらいの」

「そうそう、ひとりやったわ」

「おとうと、どないしたんやろ?」

「ああ、訊いたんや。『おとうと、今日は一緒と違うんか?』言うてな」

「『あかん』言うんで、ケンカでもしたんか? 訊いたら、ケンカはしてないけど言うんで、なにかあったんか? 訊いたら、いろいろ話してくれた」

「なにがあったんやろ?」

「トラちゃんのビー玉50コと、おとうとのキンちゃんのプロ野球カード5枚との交換条件が、うまいこといかんかったらしい」

「それで、なんでブンちゃんが『あかん』言うたんやろ? あかん、言うたんやろ?」

「子供の世界いうても、ややこしいねや」

「そうかなあ?」

「ブンちゃんが、トラちゃんと、おとうとの、なんやったか」

「キンちゃんやろ」

「そうそう、キンちゃんのあいだに入って、仲介役を買うてでたらしい」

「仲介役て、子供がそんなこと言うたん?」

「いやいや、子供やから、そんなことは言わんけど、そういう意味や」

「そやろな」

「一種の安請け合いをしたわけや」

「だれが?」

「ブンちゃんが、よ」

「安請け合いて、子供やからな」

「トラちゃんには、おとうとのキンちゃんが持ってるプロ野球カードの滅多に出らん、言わばプラチナカードを5枚、これはトラちゃんがノドから手が出るほど欲しがってるやつやからな」

「なんやかや言うても子供やな」

「まあ、大人いうても似たようなもんやけどな」

「それをあげる、言うし、おとうとのキンちゃんには、トラちゃんがビー玉50コと交換OKや言うてると、両方ともにええかげんなこと言うたらしい」

「子供やな」

「まあ、大人でも一緒やけどな」

「それでどないなったん?」

「交渉決裂、パアでんがな、いうやつや」

「ブンちゃん、なんでそないなええ加減なこと言うたんやろ?」

「なんでやろな。キンちゃんにはお兄ちゃんらしいとこ見せたかったんとちゃうかな」

「トラちゃんには?」

「怒らしたら、遊んでもらわれへん言うてた」

「ハハハハ、子供やな」

「大人も一緒や」