子供の自殺
「なんでやろ? わからんな」
「なにが?」
「子供の自殺」
「そら、いろいろ事情があるんやろ」
「そらそうかもわからんけど、おれが思うのは、子供が自分の意思で自分の命を絶つという心理が理解でけへん」
「そら、おとーさん、『おれかて今の世の中に生まれたら今の人間の生き方しかでけへん』、おとーさん、いつもそない言うてるやないの」
「そう言われるとあとが続かんけど、自殺なんか考えたことなかったけどなあ?」
「そらわたしかて一緒やわ」
「フランスでもそうか」
「やめて」
「いじめられたことあったけど、泣いたらそれでおしまいの、おれらの子供のころと同じように思てたらあかんのやろな」
「そうらしいよ。ここまでされるんやったら死んだほうがええわ、そない思うんやろな。それにせんせーもあんまりあてにならへんみたいやし」
「まあ、せんせーの目で言やあ、これくらいで済んでるんは、だれのおかげやねん!
そう言いたいところもあるんやろけどな」
「なんか知らんけど、有り難い世の中やけど、嫌な世の中やね」
「世界中には貧しい国もよーけあって、おまけにいつまでたっても争いが絶えん、食いもんはない、ごたごたは続くで命の危険とは隣り合わせ、こんなとこの子供で、こら生きててもしょおない、死んだほうがましや言うて自殺する子て、いてるんやろか?」
「うーん、どうやろねえ?」
「有り難い世の中やけど、子供が自殺を考える世の中て、ええ世の中とは言えんわな」
「情けないな」
「情けない」