「おしん」と「なつぞら」
「始まったな」
「なにが?」
「『おしん』の再放送」
「おとーさん、観てた?」
「昔?」
「そう」
「観てない。仕事もやったけど、別に観ようとも思わなんだな、貧乏物語」
「わたしも観てない」
「そらそうやろ。フランスで同時放送なんて時代やないで」
「フランス人やなんて言わんといて。知らんしと本気にするやろ」
「しゃあない、ペラペラやから。『ごきげんいかかが?』はなんていうたかな?」
「コマンタレブー」
「『おはよーこんちわこんばんは』は?」
「おはよーとこんにちはは一緒でボンジュール、こんばんははボンソワール」
「ほれ、ペラペラやんか」
「あきれるわ」
「けど比較できるからおもろいな」
「急になんの話?」
「『おしん』と『なつぞら』、ママン『なつぞら』観てるけど、おもろいか?」
「おもしろいよ」
「どこが?」
「どこがて、おとーさんかて観てるやろ」
「観てるけど、比較したらおもろいなー思て。ママンはなにも感じへんか?」
「別に。観てるだけや」
「そうか、それやったらそれでええけど、ひとことで言うたら『なつぞら』はおままごとやな、15分15分続けてあるやろ、『おしん』と比較できるから、笑うで」
「おままごとて、なにがおままごとなん?」
「ドラマ作りの熱意ちゅうんかな、なんか脚本もええかげんなような気がする」
「そんなことあんまり考えんと観てるからな。おもろないやろ、おとーさんみたいな人ばっかりやったら、作る人も気ィ悪いで、知らんけど」
「さっき女の子なんて言うてた」
「けーさつで?」
「そう、おまわりさんに『東京帰るからおカネ貸して』みたいなこと言うてたやろ? そのあともじもじしながら、『トイレ貸して』言うたんとちゃうか?」
「そこのどこが変なん?」
「70年も前の戦後まもなくの話やで。そのころトイレなんて普通言うてたか? 知らんけど」
「便所やわなあ? 知らんけど」
「そやろ。便所が普通や思うけど、だれか知らんけど、子役のあの子に、便所いうセリフ遣わしとうなかったんかな、知らんけど」
「ええやんか、それくらい。韓ドラもけっこうええ加減やで。そない言いながらけっこう観てるけどな。ドラマはそれでええんとちゃう、知らんけど」
「まあ、ママンの言うとおりかもしれんけど、ドラマ作り雑になったいうか、手ェ抜いてるいうか、カネかけてないのがよーわかるようになったな」
「コマーシャルの合間に番組やってるんちゃうかみたな、ね」
「そうそう、あのコマーシャルの時間で、別の番組1本作れるとちゃうか、思うな」
「『水戸黄門』なんかもいろんな俳優さんがやっってるんをあっちこっちの局が再放送でやってるし、BSで『寅さん』や、この前は『コロンボ』もやってたな」
「初めて観る人もいてるやろうから、再放送もええんやけど、テレビ観る人が少のうなったんやろな」
「そやろ、そやさかいわたしはせっせと観てるんやないの」
「さすがママン、そこまで考えてたんやな。腕、あげたやないか」