新元号
「いよいよあしたやなあ」
「なにが?」
「新元号の発表」
「えッ? なに?」
「しんげんごう。わからんか?」
「ああそのこと。しんげんごうやろ。おとーさんの聞いてると、信玄公に聞こえるで」
「ああ、やっぱり直らんもんやなあ、熊本弁のアクセント」
「ええけどな」
「雲と蜘蛛、柿と牡蠣、どっちも一緒やもんな」
「まあ、しゃーないわ」
「じいさんばあさんが、明治大正昭和、おっかさんとおやじが大正昭和平成、おれとママンが昭和平成と続いて、次、なんになるんやろ」
「もう決まってるんやろ?」
「そらきまってるやろ」
「なんになるんかな」
「パソコンの掲示板みてたらな」
「分かった?」
「いや、それはまだやけどな。『安晋』いうんがあったわ」
「あんしんいうたら、あのあんしん? ああ、安心したいうあの安心?」
「いや、それやない。いまの総理大臣の名前、安倍晋三やろ。その名字と名前から1字づつ取って安晋や」
「あきれるわ」
「誰が決めるんか知らんけど、要するに有識者と呼ばれる人達が、あれやないこれやない、これはどうやあれにしたらええんとちゃうか、侃々諤々決めるんやろけど、結果『安晋』になったら、忖度ここに極まれリ、いうことやろな」
「いっそのこと『忖度』にしたらどないなん?」
「そらあかん。昭和のSとかぶるからな」
「そんなことも考えるんや」
「おもろいやろ」
「おもろないわ」