童謡「ウサギとカメ」の欺瞞を暴く(2)
「ママン、『ウサギとカメ』の3番の歌詞、知ってる?」
「う~ん、憶えてないわ。どんなんやった?」
「調べてみよか?」
「うん」
「わかったわ。3番だけや思てたら、4番まであるわ。ええか」
「唄うてみて、あ、ええわええわ。唄わいでもええから、言うてみて」
「言うで」
「言うて」
「どんなにかめがいそいでも どうせばんまでかかるだろ ここらでちょっとひとねむり グーグー グーグー グーグーグー。これ3番な、憶えてなかったなあ。ママンは憶えてるか?」
「うん、唄うた憶えある。もひとつあるんやな?」
「うん、4番な。言うで。これはねすぎたしくじった ピョンピョン ピョンピョン ピョンピョンピョン あんまりおそいうさぎさん さっきのじまんはどうしたの。これが4番や」
「うん、これも唄た覚えがあるわ。おとうちゃんおかあちゃんの前で、よう唄たな、あのころ」
「ママンは歌がうまかったんやな、子供のころから。フランスでもこの歌、唄てたんか?」
「フランスはええ、言うてるやろ」
「なあ、こんなんや」
「こんなんやて、なんやの?」
「わからんか?」
「なんなん? この歌、おかしいとこあるか?」
「あるある。わからんか?」
「そこまで言うんやったら、言うてよ」
「まあ、ウサギが寝てしもたんやから、言えば自業自得やろけど、カメも自慢たらしいに言わんでもええんとちゃうか、そういうことや」
「言われてもしゃーないんちゃう。油断したんやから」
「うん、それわかってんねん。けどな、こんなこと言うてる人もいてはんねん。『寝てるウサギをなんで起こさなんだんやカメは』言うてな。どのあたりでかは知らんけど、寝てる横を追い抜いていったわけやからな、カメは」
「言うても競争やからな。起こしたら負けるんはわかってるからな」
「そらそのとおりや。ママンの言うとおりやけど、相手の油断につけこんで勝ってもうれしいのかカメは、ちゅうことやけどな」
「しゃーないわそれ。世の中たいがい、そんなもんやろ。油断したほうが負けて、あとになって、なんで起こしてくれなんだんや言うんは、ちょっと話が違うんとちゃう、知らんけど」
「うん。まったくそのとおりやと思う。まあ、おれが言うてるんは、カメのココロの問題や、言うんやけどな。チクッとでも痛まなんだんかなカメのココロ。歌詞では自慢してるやろカメは」
「しゃーないわ。負けは負け、なに言われても我慢せんと。わたしの場合はちょっとちゃうけど。なあ、おとーさん?」