朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

気分はインディアン

 おれは騎兵隊に追われてる? ではないなら、騎兵隊を追い詰めている? でもないのだ。騎兵隊もモニュメントバレーも関係ない。おれは自分の家へ帰ろうとしているのだ。愛する妻やかわいい子供の待つ我が家へ。居留地? じゃない! 自分の家だ、アリゾナでもオクラホマでもない、自分の家だ。おれはインディアンになった気分で角ハンドルのオート三輪を運転していたはずなのにいつのあいだにか本物のインディアンと間違われていた。誰に? 自分にだ。相生町2丁目の交差点が目の前に迫ったときおれは急にインディアンの気分は影も形もなく霽れて角ハンドルのオート三輪をなぜ借りたのか? その意味がわからないとおれは思った。自分の家のある西宮に帰るのなら電車があるではないか? 急に、そして、後部の荷台に乗っているふたりのことを思い出した。どこの駅まで送っていってふたりを下ろそうかと思ったとき、もうおれの運転する角ハンドルのオート三輪相生町2丁目の交差点内に入っていた。おれは左の足で強くブレーキを踏みながら立ち上がり、左手で掴んでいた角ハンドルに右手を添えて思いっきりググッと手前に引いた。ハンドルの先端がおれの脇腹を打った。角ハンドルのオート三輪は、おれの気まぐれな急ハンドル急ブレーキに悲鳴をあげながらも辛うじて横転することなく職責を果たした。三輪車の急ハンドルが横転に弱いことを知らなかったわけではなかったが、やむをえなかったのだ。