おとーさん、ユメはなに?
「おれのユメ?」
「そう、おとーさんのユメ」
「そやな。イナカ行って、釣りしたり、はたけ耕したり、薪割りしたり、そんなとこかな」
「イナカって、おとーさんの田舎?」
「そやな、おれの田舎。知ったとこがええからな」
「わたしは行かへんよ」
「そやな。そやさかいな、ママンがこっちで何不自由なく生活できるだけのカネがでけたら、行こ、思てんねん」
「それで、宝くじ買うてんねんな」
「わかってるやないか。ほかにもな、公園とか道路きわの植え込みとか、通るときはちょっと注意して覗き込んだりしてるんや」
「なにそれ?」
「1億円入ったカバンでも落ちてるかもしれんやないか」
「おとーさん、ええカゲンにしーや! いらんはそんなカネ。ユメかなえたかったら自分のチカラでなんとかしーな」
「できるくらいなら、とーのムカシにやってるわ」
「なさけないなーもう、このシトは」
「月になんぼあったらおれがおらんでもえーか?」
「年金やろ。それに働いてるおカネがあって、まあ、25万から30万あれば、おとーさん自由にしてもえーわ」
「そやな。それくらいの計算やろな。それがなんとかなったらな。おれもおれのユメかなえられるんやけど。ユメはしょせんユメやからな。けどかなうもんならかなえたいな」
「どっちやねん。あかんわ、おとーさん」
「いやいや、いまの世の中、なにが起こるかわからん。ユメは死ぬまで捨てへんで。ママンにデビ夫人みたいな生活してもらわんと、死んでも死にきれん」
「ハハハハハ、ハハハハ、ハハハハもう。オナカ痛いわ。おとーさん、笑かさんといてハハハハハ、デビ夫人やて。おとーさん、ウデ、あげたな、ハハハハ」