不足2000万円って、なに?
「おとーさん、えらいことやで。長生きでけへん」
「長生きでけへんて、もうジュウブン、長生きしてるやないか」
「なに言うてんの、おとーさん。結婚してからこっち、いっこもえー目してないのに。わたしの青春、返せ、言いたいわ」
「返せるもんやったら返したるけど、現実はそーもいかんからな」
「わかってるわいな」
「イヤな世の中やで、先々よーなる思てたら大間違い、ますます厳しなるで」
「それでもなんとかやってるやないの」
「ママンは知ってか知らんか知らんけど、世の中粉飾、国民なーんも知らんと『ああ、ええ湯やなー』と漬かってるけど、むかしばなしでタヌキやキツネにだまされて、コエダメに漬かってるんが現実かもしれんのや」
「おとーさん、たとえが汚いな。もっと言いよーもあるやろ」
「そやな、風呂がでたんで、茹でガェルにしとこか」
「茹でガエルてなんやの?」
「ああ、ええ湯やなー思て漬かってると、少しづつ温度が上がって、気づいたときゃ茹で上がってるいうこっちゃ」
「そんなんやったら気づくやろ」
「ところがどっこい、気づかへんねん。ところで、なんやねんママン。長生きでけへんて」
「ク二が言うてんねん。おとーさんも新聞やテレビで知ってる思うけど、65歳から95歳までの30年間で、年金だけの生活やったら2000万円の不足が出るそーやないの」
「なんやねんな。そんなことで長生きがどーの生活がどーのて、心配してんのかいな。やめときやめとき」
「あれ? おとーさん心配やないの?」
「心配するかいな。こんなんで心配するよーやったら、とーのムカシに生きてないわ」
「めずらしい。なんかえー方法でもあんの?」
「かんたんや。宝くじ発行すんねや、国民個人宝くじ」
「だれが買うの?」
「そらいまおれらが買うてるたから宝くじの発行元であるク二や都道府県なんかの自治体に買うてもらうんや」
「買うてくれるやろか?」
「買うてくれるに決まってるやないか! これまでずーッずーッと、何十年もおれらが買い続けて宝くじ支えてきたんやで。それも還元率50パーセントもないんやで。控除率なんていうて誤魔化してるけど、バクチなんかでいうテラ銭、これ50パーセント超えてるんやで。ボッタクリや!」
「おとーさん、宝くじにえらいウラミがあるみたいやな。それやったらやめたらえーのに」
「取り戻すまでやめられるかい! こんどはこっちの番や。テラ銭、50パーなんて言わへん、やさしいもんや、10パーでええ、国民総意で宝くじ発行して、国民ひとり当たり100万円づつク二に買うてもらうんや」
「そしたらどーなるの?」
「これを毎月とは言わへん。2ヶ月に一回買てもらう。そしたらテラ銭10パーやから100万円の10パー、10万円がおれらの手元に入ってくるいう寸法や。それ2ヶ月に1回やから年間60万、2000万不足には足るかどーかしらんけど、生活に余裕はでる、物を買う、ケーキよーなる、税金国に入る、えー循環が起こるちゅう段取りや」
「そないにうまいこといくやろか?」
「そらわからん。けど、あんだけアタマのええ、政治家のおっさん連中とか官僚のおっさんレンチュウがよってたかってやで、累積赤字、なあ、イッセンチョーエンを超えてるんやで。カマイッチョウ、トーフイッチョウとはわけがちゃうんやで」
「そやなあ。わたし絵が得意やろ、宝くじの図案考えるわ」
「頼むで」