ハイ! わかりました
「ママン、昨日のテレビ『やすらぎの刻』観てたやろ?」
「うん、観てたよ。おとーさんも遺言とか、なにがどこにあるかとか、紙に書いといてよ。もうこの歳やからなにが起こってもおかしないからね。子供には迷惑かけられへんやろ」
「そやなあ。ドラマや思て他人事で観てるけど、『あんたに言うてるんやで』ちゅうことやもんな」
「そうよ。ボーッと生きてたら」
「チコちゃんに叱られるか」
「そやで、わたしもおんねんで」
「まあなあ、どー考えてもママンのほうが長生きしそうやからな。この歳になると、なんとのう自分の寿命いうんが予感できるから、こんなんは歳とってみらんとわからんもんやな」
「そーなん? わたしはまだなんともないよ」
「それでええねん。子供のためにもママンはもっと長生きしてもらわんと。明治大正昭和平成令和やろ。もう一回次の元号はなんになるか知らんけど、ママンやったら行けそうやで」
「わたしはバケモンか。あきれるわ」
「いやいや、そのくらいの気持ちでおってちょーどええ、そういうこっちゃ」
「とにかく、なんやかんや言うても、寝たきりで生きててもしょーがないからな。元気でおらんと」
「そうそう。バランスのええ食事、適度な運動、この歳になるとなかなか走るいうことも逆に負担になるんで、とにかく歩く、適当に脚の筋肉をつよーにするんやったら、階段の上り下りがええらしいな。ヒザなんかに負担のかからんようにしてな」
「『イズミヤ』からの帰り、駅横の階段上がってるやろ、おとーさんも一緒に。あれ、わたしが『やろか』いうたんやで? 憶えてる?」
「ああ、憶えてるよ。おれエスカレーターのほうばっかり行ってたからな」
「そやろ。わたしの言うてること聞いてたら、間違いないからね。まだガンバロな」