梅雨明け近し
「毎日暑いな」
「湿気が多いから、かなんな。えーな、おとーさんは、ハダカんぼうでおれるから」
「ママンもやったらえーねん」
「そーゆーわけにもいかんわ」
「減るもんやなし」
「減るわ!」
「もーしばらくのしんぼーやな」
「もーしばらくのしんぼーて、本番はこれからやないの」
「暑い暑いゆーても、右向いて左向いてチョンや。寒なったらなったで、はよ温ならんかなーゆーやろ」
「おとーさん、そら屁理屈や。暑いときは暑いゆーんが正直なまっすぐのニンゲンや」
「まっすぐなニンゲンか。まっすぐ死んでもイガンで死んだゆーハナシもあるで」
「なによそれ?」
「漫才のコットーヒンでございましてね、ゆーてはった捨丸・春代さんのギャグや」
「おとーさんもフルイなー。捨丸・春代知ってるヒト、そーそーおらんよ、知らんけど」
「ママンは知ってるやろ」
「知ってるやろゆーて、聴いたからやないの、おとーさんに」
「フルイなおれも。まー、もーしばらくのしんぼーや。梅雨が明けたらプールでも行くか。テレビで宣伝してるやろ。あの高いとこから滑るやつ。あれおもろそーやで」
「おもろそーやてあんた、自分のトシ考えや。滑ってる途中で死んだら、どーすんの」
「カラダは上から下に、タマシイは下から上に、か。おもろいな」
「なにをアホなことゆーてんの。ほんまに、アホなんやから」