善人・悪人を見分ける方法
「子供のころの話やけど」
「なに?」
「じいさんがな」
「あの、写真の、お仏壇にあるあのおじいさん?」
「そうそう、あのじいさん」
「なんて?」
「じいさんが子供のころ、カッパと相撲取ってたらしい。川のそばに行くといてて、むこうから勝負仕掛けてくるらしい」
「そんなことないやろ。あれ、ほんまはいてないらしいよ」
「けどじいさんはそない言うてたで。100年以上も昔、明治時代の話やからな」
「信じられんわ。おらん思うよ」
「じいさん、ウソ言うてたんかな」
「そういう意味やないけど」
「カッパの身体何色か知ってるか?」
「知ってるよ。グリーンやろ」
「知ってるやん。好物はなに?」
「キュウリ。あればっかり食べるからグリーンになるんやろか」
「そうかもしれんな。知ってるやん」
「テレビなんかでもそう言うてるよ。キュウリの海苔巻き、カッパ巻き言うやろ。頭にお皿があって、そこが乾いたら元気がのうなる言うて」
「やっぱりいてるんや。そこまではっきりしてるんやからな」
「いやあ、それは話やからな。実際とはちゃうから。いてるんやったら今でもいてるやろうし、どっかで絶滅したんやったら何か、標本みたいなんが残ってるんとちゃう? しらんけど」
「じゃあ、ママンはカッパの存在を信じてないんやな」
「信じるもなにもないやろ。だれも見た人おらんのに」
「そんなことないわ。現にじいさんは相撲取ったて、言うてるからな」
「冗談で言うたんとちゃうの。おとーさんが子供のころやろ」
「冗談やったんかなあ」
「冗談やと思うよ。おとーさん信じてんの、カッパ」
「信じてるよ。会いたいとも思てるよ」
「信じる者は救われるいうから、ええっちゃええけど。おとーさんの勝手やからな」
「そんな冷たい言い方ないやろ」
「けど、なんでカッパの話なんか持ち出したの?」
「いやあ、テレビ観てたらな」
「それで?」
「カッパの存在を信じる者とな、信じられへんいう人といてたんやけど、信じるひとはええ人で、信じられへん言うひとは悪人やと、そんなことを話してたからな」
「そしたらわたしは悪人で、おとーさんはええ人やいうことやな。それだけでもデタラメいうことがわかるやろ。だれやねんそんなこと言うたんわ。カッパ巻きにしたろか」