むかしむかし、ヒルはヨルでヨルはヒルだった。
「ママン」
「なに?」
「つかぬことをおウカガイしますけどね」
「なんやのん? キショクのわるい」
「昼と夜の区別って、わかる?」
「なに言うてんの? 教えてほしいの?」
「いやいや。おれはわかってるけど、ママンはどーかな? 思て」
「ママンはどーかなって、言うてる意味、わかりませんけど」
「ということはわかってる、いうことやな?」
「とーぜんやないの。夜と昼やろ。暗くなったら夜、お日ィさんが昇って明るくなったら昼やないの」
「そのとーり。そこまでわかってたらそれでええんやけどな」
「おとーさん、大丈夫かァ? ちょっと・・・」
「いやいや、アタマさわらいでもええねん。じぶんではオーケーのつもりやからな」
「わからんで。お医者さんも言うてたで、自己判断がいちばんアカンいうて」
「そらママンのことやないか。いやいや、なんでこないなわかりきったこと訊くかというとな。むかしむかしのハナシやけど、夜が昼で、昼が夜だったいうんを知ってるかな思て」
「昼が夜で、夜が昼て? どーゆーこと? そんなことありえへんやろ? 昼は昼、夜は夜、それがなんで昼と夜が入れ替わるの?」
「正直に言うけどな。おれもわからんねや?」
「おとーさんが言い出したことやで。説明してもらわんと」
「ところがな。そのころ、そのころちゅうことはやな、ヒルヨルがいまの世の中と違うて逆やったころのことやで」
「はー?」
「ニンゲンというどーぶつがこの世に、いやいや、この世にというより、地球上にというたほーがええかな、現れるまえのハナシのことやから、ヒルヨルが逆だったんをだれも見たもんがおらなんだいうんで、仕方ないこともあるんやけどな」
「それやったら、だれもそーやったんやー言うことでけへんのと違う? 知らんけど」
「そやねん。けどヒルヨルがいまと真逆だったんは事実らしいんや」
「だれも説明もしょーめいもでけんのに、なんでそれが言えるの?」
「おれに訊かれてもなー」
「言い出したんはおとーさんやで。なーんかモヤモヤさせといて、意味わからんわ」
「わからんけど、そーや、いうこともあるやろ」
「もーええ!」