後期高齢者の運転免許証更新に伴う『認知機能検査』の内容 その1
「おとーさん、タイトルがえらい長いね。いっぺんで覚えられる?」
「いや、これは覚えんでええんや」
「なに覚えなあかんの?」
「覚えないかんのはな、4枚の絵、例えば戦争で使う戦車とか大砲とか機関銃とか、こんなんを記憶力を試すんに利用するなんてどうかと思わんでもないけど、まあこれは記憶力の検査やからどうでもええことやけど、ほかにはトマトやトウモロコシなんかの野菜の種類や台所で使う道具、包丁とかフライパンとか、いろんな絵が4つワンセットになったんが4つ、つまり1枚に16個の絵が載ってるんや」
「ふーん、なんかややこしそうやな」
「まあ、若いもんにはそう難しいこともないんやろけど、おれはもうもだいぶボケてるからな」
「大丈夫なん?」
「わからん。やってみるまでやけどな」
「それで、そんな絵をいくつ覚えなあかんの?」
「だから全部の16個や。いやいや、これだけ全部覚えて答えられたら100点やいうことやけどな」
「それやったら16個全部覚えたらええの?」
「基本的にはな。ところが、そうは問屋が卸さへん仕組みになってんねん」
「ええー、まだなんかあんの?」
「そやねん。16個載った絵が全部で4枚あって、認知機能検査で使うのはその中に1枚やけど、それはその日行ってみて初めてわかるという、そないな仕掛けになってんねや」
「へえー、そう。おもしろそうやね」
「他人事や思て、よう言うな」
「そしたら全部覚えよう思たら、いくつ覚えなあかんの?」
「16の4やから64やな。64個覚えたら言うことなし、いうことや」
「64個も、覚えられるか?」
「わからん。けど挑戦や」
「がんばりや」(つづく)