後期高齢者の運転免許証更新に伴う『認知機能検査』の内容 その2
「で、どないして覚えんの?」
「絵を見てひとつひとつ覚えるやりかたが出来りゃそれがええんやろけど、歳とるとなかなか時間がかかりそうやからな」
「なんか別なやりかたがあんの?」
「うん。おれが考えた方法はな、いやべつに、おれのオリジナルやないけど、まず最初の4つの絵があるやろ。これをなひとつにまとめて覚えてしまおうというわけや」
「どうすんのよ?」
「うん。4枚のうちの最初の絵が4個づつ4つ、これはもう言うたと思うけど、この4個、『耳』やろ、『ラジオ』やろ、『オルガン』、『大砲』や」
「はあはあ」
「まあ覚えたてはそれなりに1個1個覚えなあかんのやけど、覚えやすうにするためにそれでひとつの物語いうんか、自分なりのつながりを作るんや」
「はあ? もうひとつようわからんけど」
「耳・ラジオ・オルガン・大砲やろ。これをな、『耳で聴く ラジオオルガン ドン!大砲』という具合にひとつのリズムいうんか、これは俳句なんかの5・7・5のやりかたなんやけど、わりといけそうなんや」
「次はなに?」
「『フライパン』、『テントウムシ』、『ライオン』、『タケノコ』や」
「それはどないして覚えんの?」
「『フライパン、上で踊るはテント虫、タケノコくわえたライオンさん』や」
「♫ おさかなくわえたノラ猫~、サザエさんやな」
「そうそう、そうや。♫ タケノコくわえたライオンさん~、や」
「大丈夫なん、そんなんで」
「どんなんでもええねん。覚えさえすりゃええんやから」
「3つ目は?」
「『ぶどう』、『ものさし』、『スカート』、『オートバイ』や」
「これつながる?」
「無理矢理にな、つなげたんや。『スカートはいたぶどうさん、ものさし片手にオートバイ』」
「ハハハ、意味わからへん」
「ええねや。分裂症のおれのアタマにはぴったりや」
「もうひとつ、あるんやろ」
「そうや。『ニワトリ』、『バラ』、『ベッド』、『ペンチ』や」
「ベンチ?」
「いや、ペンチ。大工道具なんかのペンチ、ドライバーとかあるやろ、あのペンチ」
「ああ、ペンチね」
「そうそう。これはな『ニワトリがベッドで寝てる、両手にはバラとペンチを持って』で覚えてるんや」
「なんかしら、ぎくしゃくしてんな」
「なんか、ないか?」
「うーん、そうやな。こんなんどかな。『両手にバラとペンチ持ち、ベッドで寝てるニワトリさん』。どう?」
「ママン、うまいな。認知症検査、おれの代わりに行ってくれ」
「やっとれんわ」(おわり)