朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

落語『蜘蛛の糸』-17

  洗面所にて詠める

 蛇口より瞬時にお湯の出る暮らし ここは極楽死なば地獄か

 

 スーパー「イズミヤ」にて詠める

 季節なく並びしトマトきゅうりらよ すべて君らの罪にあらねど

 

  お釈迦様が閻魔大王にお尋ねになった、芥川龍之介がなぜ『蜘蛛の糸』という小説のなかで、地獄で苦しんでいるカンダタという極悪人を助けてやろうとお思いになったのか、その理由は、前世にひとつだけ、たったひとつだけでも善いことをした、それに免じて極楽の蓮池から蜘蛛の糸を垂らしてこのカンダタを助けてやろうとお思いになった、というのはじつは表向きのことで、もっと奥に深い意味が隠されているのではないかという、もっともお釈迦様のお知りになりたい思いは、死んだようにいつまでも目覚めぬ龍之介から訊き出すのは無理だろうと諦めておしまいになったのでございます。

 もちろん、龍之介カッパが眠りから覚めたとしましても、人間でいたときの記憶はすべて忘却のかなたでございますから、どっちに転んでも訊き出すのは不可能というわけで。

 さて、瞬く間に3年という月日が経過したのでございます。光陰矢の如し、と申します。これは地獄とておなじこと、肝心の龍之介カッパの消息やいかに、気になるところでございますが、相も変わらず、水に馴れさせようと番卒Cの白鬼が三途の川で龍之介カッパの介護を続けております。しかし一向にその兆しは見えず、まだ死んだように眠ったまま。世話をする白鬼も時々は「これは死んでしまったのではないか?」と思うこともあるのですが、龍之介カッパの尖った口の上の開いた二つの穴に手をかざして「いやいや、息をしてるんだから死んではいない」と思い直し、また気を取り直して介護を続けてはいるのですがいつこの状態から解放されるのか目途もたたず、白鬼の頭のなかでは思いもよらぬ「息をしながら死んでいるということも考えられる」、などという日々が続いているのでございます。

 そんな日々のなか、遅ればせではありますがひとつの決定がなされたのでございます。閻魔大王と副大王・閻魔コオロギとの協議によって、いつまでも眠りから覚めぬ龍之介カッパを一時現世へと戻し、目が覚めたのを見計らって地獄へと連れ戻し、さらにはカッパからふたたび龍之介へと変身させ、お釈迦様からお尋ねになった一件を訊き出ことにしようと決定したのでございます。

 それからまた数日が経過、龍之介カッパの行き先が決まりました。こうなりますと話はトントンと進むもの、カッパということで、カッパ伝説の豊富な九州が候補にあがり、そのなかでも熊本がよかろうと、閻魔大王は判断されたのでございます。

 熊本には八代(やつしろ)という地名のところがございまして、ご存じ八代亜紀という演歌歌手の出身地でございます。ナツメロファンの閻魔大王もそのことはお調べになっており、演歌もよく聴くという、そういうわけですから八代という地名のところに決定したのかもわかりません。

 この地には、その昔、中国から大勢のカッパが渡来したという伝説がございまして、日本におけるカッパ発祥の地として知られております。その八代から少し北の方角になりますが「緑川」という、名前からしていかにも清流を思わせる川がございます。

 この川の中流域のとある場所に「大蛇ヶ淵」という、いかにも恐ろし気の名のついた場所がございまして、ここが龍之介カッパの棲み家となったのでございます。(つづく)