朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

落語『蜘蛛の糸』ー40

 さて、中国の神様仏様、またわたくし如き凡人にはとてもマネのできない賢人と呼ばれる方々のお噺、続きでございます。

 孫悟空が操縦してまいりましたキント雲に山と積まれました諸々のなかには、大小が2段になった円形の、あのクルクル回して自分が食べたいと思う料理を目の前に持ってくることが出来るテーブル、あれは中華テーブルと呼んでよかったのどうか、あの円卓の名前を知りませんので中華テーブルと申しておきますが、あれ、いまふと思ったのですが、回転寿司、あれがヒントになったのかなと、まあどうでもいい話ですが。

 その中華テーブルもまた山と積まれております。また中国で退屈しのぎ、あるいはまたアタマの体操も兼ねて人気がございますのが、よくご存じのマージャンでございます。これはもう日本でも以前は大変に流行って、大学生なども卒業して就職、社会人になったあとの出世にからむ必須の遊びでしたが、只今はもう随分とやる人が少なくなったと聞いております。

 このマージャン台と牌、これもセットで、中華テーブルと並んで山と積まれております。

 賢人会議、と申しましても実態は飲めや唄えやのドンチャン騒ぎなのでございますが、会場には、天国会のリーダーでございますイエス・キリストも、極楽会の会長のお釈迦様もまだお見えになっておりません。そのあいだを利用して賢人の面々はそこここと何台ものマージャン台を据えて、その前にあぐら座りに座ってジャラジャラと牌を揉んでおります。チー、ポン、リーチ、ドン! トイトイ、ハネマンとその賑やかなこと、賢い方でも遊びとなると子供に返ると申しますが、本当なのでございます。しかし、さすがに賢人と呼ばれる方々は積み込みなどというセコイ手はお使いにならず、きれいな遊びでございます。

 さて、もうおひとりの方をご紹介いたしまして、噺の本題のほうへ戻りたいと考えております。と申しましても噺が横道へ迷い込むのはわたくしの得意技でございます。どうか気楽にお付き合いのほどお願いを申します。

 ご紹介いたしますのは、極楽ではなく天国の住人の方で、遙か彼方から土煙を巻き上げながらすごいスピードで疾走してくるものがございます。耳をすませて見ますが、ラッパの音が聞こえないところをみると、騎兵隊ではなさそうです。

 この未確認走行物体ははたしてなにかと申しますと、これまたとてつもなく巨大なトラックなのでございます。遠く、かすかにエンジンの回転音らしきものが聞こえ、豆粒ほどだった車体がみるみるスピードを増し、そのうしろの土煙も見る間に大きくなって近づいてまいります。その地響きは大地を振動させて、こちらから見ている者の身体も、その振動を感じてかすかに震えているようにも見えます。

 さらに近づくにつれ、トラックはスピードを増し、いよいよ近づくにつれてそのトラックがとてつもない大型の、運転席は5階建てビルほど高さにあって、その運転席のドアから地上へ降りるにためにエレベーターが備え付けられておるという、オーストラリアやカナダ、アメリカの鉱山で稼働しております特殊の大型車両にこれだけのものがないのでございます。

 トラックと申しましてもこの化け物は牽引車でございまして、後方の遙か彼方まで続くコンテナを牽引してここまで来たのでございます。

 ブレーキが踏まれると、まだ走り足りないのでもっと走らせろと、まるで生き物のようにガクンガクンと何度か車体をしゃくらせて、ようやく温和しくなります。後方で舞い上がったもうもうたる土煙が逆流してあたり一面を覆い、しばらくのあいだ、トラックの到着を見物していた多くの神様やほとけ様を砂まみれにしたのでございます。

 興味津々、羨望の眼でおそるおそる近づいてみますと、マフラー、エンジン直結の排気筒でございますが、これが200リットル入りのドラム缶ほどもあり、そのマフラーの先端はその牽引車の後方の壁に沿って直角に上に伸び、その牽引車の屋根より少し高いところで切れて黒い煙を吐き出しております。(つづく)