朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

落語『蜘蛛の糸』ー45

 お釈迦様がお乗りになった先頭の象の後ろには、お釈迦様のお乗りになってる白象ではございませんが、動物園などで人気のあの灰色の象の行列が延々と続いております。その数3800頭・・・先日このお噺を大阪サンケイホールでいたしておりましたところ、最前列のお客様からお手が挙りまして「おまえなあ、象が3800頭って、ほんまに、数えたんかい?」

 そうおっしゃいますので、わたしもつい意地になりまして「たしかに数えました」そう申しますと

「ほんまやな、ほんまに数えたんやな?」

 わたしも「いえいえ、これは落語ですから」と申し上げたらよかったのですがつい、また意地になりまして

「たしかに、数えました」

 と申し上げたところ

「ほんまやな。ほんまに、ほんまやな、それやったら数えたいう証拠があるやろ、証拠見せ、見せてもらおか」

 ・・・「ごめんなさい。ウソを言うておりました」・・・謝りました。

 ということで3800頭でございますが、幼稚園児が手を繋ぐように、前を歩く象のしっぽをその後ろの象は長い鼻先で器用に巻きつけ、同じ歩調で前の象に続いております。それぞれの背には本場インドカレーが山と積まれております。いま流行のレトルトパックでございますから熱湯3分、あるいはレンジでチン! の手軽さ。とは申しましても味は折り紙つきの『極楽カレー』、また、至れり尽くせりトマトたっぷりのハヤシライスも用意されておるのでございます。

 さて、3800頭の象を引き連れました先頭のお釈迦様、初心に還ろうとお思いになってきれいさっぱりパンチパーマの髪を下ろされ、テカテカの坊主頭におなりになったのではございますが、白象の背にお座りになり象の歩調に合わせて泰然と揺れていらっしゃるお姿は、やはり貫禄が違うのでございます。

 お通りになるお釈迦様のまわりを囲んで手を振ったり拍手をしたり、どこからかヒューヒューと指笛が聞こえますのは、沖縄・奄美の神々でしょうか。38億の神様ほとけ様イナオ様に向かって右へひだりへとおだやかなお顔をお向けになり、うなずいたり、手を挙げては微笑み返しで応えていらっしゃいのでございます。

 やがて会場のメインステージにお着きになりましたお釈迦様は、前足を折り曲げて身体を低くした象の背から下りられます。ステージの中央にはこの日のために、天国・極楽の名工によってその粋を結集してデザイン彫刻を施したという、蓮華座が用意してございます。

 この蓮華座は、ハスの花をモチーフにデザインされた台座で、純金に純プラチナの台座に、ダイヤモンドや翡翠、瑪瑙、猫目石オパールパール勾玉などの宝石類で装飾を施した逸品でございます。製作には快慶や高村光雲、光太郎の親子、平櫛田中やまた、中国故宮博物館に展示されておちます翠玉白菜を拵えた方も、名前を明かさないという約束でこの蓮華座製作チームに加わっておられるのでございます。

 この蓮華座は、お釈迦様の生誕3800年というおめでたい節目のお祝いの品として、天上界すべての人々によってプレゼントされたという、豪華なものなのでございます。

 いよいよもって100年に1度開催の天国・極楽合同賢人会議の始まりでございます。ファンファーレが鳴り渡ります。ご存じ、「天国・極楽航空音楽隊」でございます。指揮者は孫悟空が勤めております。(つづく)