干し柿作り
「おとーさん、どうする。今日買うの?」
「天気よさそうやから、買おか。なんぼやったかな?」
「1000円近くやったと思うよ」
「そやったな。このまえな、どうしょうか思て見てたとき、おばちゃんが来てな『渋柿やろ、もっと安てもええのに』言うからな。おれもイナカの人間やろ。ほんまやなあ思て『言うてこーか』言うたら『言うて言うて』言うて、おばちゃんもオレも買わんかったけどな」
「いつのこと?」
「ママンがお寺さんに行った日やから、23日か」
「買うたらよかったのに」
「カード持ってなかったからな」
「言うたら預けたのに」
「あの日は水だけ貰いに行く積もりやったからな。おカネも持ってなかったんや」
「高いか安いかわからんけど、大きな柿やろ」
「そうや。あれだけ大きかったら高いか安いか、迷うな」
「何個くらい入ってたかな」
「10個くらいは入ってたと思う」
「それやったら1個100円ほどやね」
「剥いて、ヒモで結んで吊って干して、アルコールでシュッシュッして、手間のこと考えたら、えらい値段になるな。出来合い買うたほうが安いな」
「おとーさん、それ言うたらアカンわ。楽しみなんやろ」
「まあな。だんだん柔らなって、ベランダ行ってさわってみたり、陰んなってたらお日さんの当たってるほうへ移してみたり、手間みたいやけど、それがええんやろな」
「作って、正月用にしたらええやん」
「そやな。今日買おか? 剥くの、やってよ」
「今日は午後からお医者さんや」
「そうか。そやったな」