朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

『滅びるね』

夏目漱石の小説で『三四郎』てあるやろ?」

「知ってる。読んでないけど」

「いや、オレも読んでないけどな」

「おとーさん、読んでる思たけど」

「いやあ、まだその気にならんのや」

「そうなん。『三四郎』が、どないしたん?」

「その小説のなかでな、偶然汽車で乗り合わせた先生と話していて、ニッポンのこれからという話になったんやろけど先生は『滅びるね』と言うたらしい」

「『滅びる』てどういう意味やろ? 先生てその三四郎の先生?」

「いや、たしか後になってから先生と呼ぶようになったんやと思うんやけど、三四郎が学校で習った先生とは違うんや」

「そうなん。しかし先生もよう簡単に言うたな。小説、いつ? 明治やろ」

「そや」

「べつに滅びてないやん、ニッポン」

「まあなあ。そないに簡単には滅びんやろけど。けどな」

「けどな、てなに?」

「最近、予感がすんねや」

「予感がするて、それカゼと違う? 言うたやろ、予防注射」

「言うたやろて、ママンもやってないやん」

「わたしはええねん。おとーさんは仕事行くやろ。休んだら迷惑やろ」

「そらそうかも知らんけど・・・いま何のハナシしてたんやったかな」

「カゼのハナシやろ。しっかりしいや」

「そやないやろ。予感いうて、『滅びる』予感や」

「当たるわけないやろ。夏目漱石かて当たってないのに」

「まあ、なあ。それ言われたら黙らんとしゃあないけど」

「ニッポンが滅びたらどないなるんやろ?」

「どないなるんやろなあ」

「縁起でもないこと考えるんやなおとーさん。縁起でもない、やめてよ。なんでそんなこと思たん?」

「もうムチャクチャが蔓延ってるからな、いまのニッポン」

「言うてもしゃあないやろ。半分は自業自得やさかい」

「そやな。思たもんはしゃあないけど、というてどうなるもんでもないしな」

「そうそう。晩ご飯炊かなないけど、炊く?」

イズミヤ行くやろ? 給料もろたことやし、巻き寿司でも買おか?」

「そやな。1本? 2本?」

「1本でええやろ」

「2本にしたらええやん」

「なんで?」

「たまには、ホトケさんにもお供えせな」

「2本やな。たまにはな。巻き寿司やから、残ったら冷蔵庫入れてたらいけるやろ」