トラちゃん、すご~い!
「商売人やな」
「だれ?」
「だれて、トラちゃんよ」
「トラちゃんて? 渥美清?」
「いやいや、そのトラちゃんやのうて、もうひとりのトラちゃんや」
「だれよ?」
「アメリカ大統領のトラちゃんや」
「おとーさん。えらい親しそうにいうてるけど、ええの?」
「ええのて、べつに悪口いうてるわけやなし、昔、ニッポンの首相で『エイちゃんと呼ばれたい』言うてた人もいたくらいやからな。ほんまは、本人も本心ではトラちゃん呼ばれたい思てるんとちゃうか」
「それやったらえーけど。もともと商売人なんやろ? トランプ」
「ママンも呼び捨てにしてるやないか。気ィつけんと、アンタッチャブルやで」
「なによそれ。意味わからんわ」
「いやおれも、出任せ言うてるんやけどな。なあ、急に北朝鮮のキンちゃんとこに会いに行く言い出してから、そっくりそれを実行に移すなんてあれ、腐っても、やないわ、アメリカの大統領やで、大工の棟梁とはちゃうねんで。よーやるなー思て」
「これまでもだれかそんなことした人おったんやろか? 知らんけど」
「いやおれも知らんけど。自分の立場とか考えよったらあないなことそうそうでけへんで。ショウバイニンが、北極に冷蔵庫売りに行ったり、ハワイにハッキンカイロ売りにいったり、そんな発想やで、やってることが。見てたらいっつもやり方にパターンがあるな。ボーンと吹っ掛けといて、それで相手が呑みゃあ大儲け、渋るよーやったらなんぼか下ゆーて、それでも儲ける、そんなやり方や。そのてんニッポンはなんでも『ハイハイ』やから、トラちゃん笑いが止まらんやろ」
「なあ、ニッポンのそーり大臣もトランプのマネしたらえーのに。北朝鮮、前から行く行く言うて、掛け声ばかりやないの。ツいて行ったらよかったのに」
「向こうが断るやろ。まあそのまえに、それだけの度胸もないやろし」
「大丈夫ちゃう? アベノミクスアベノミクス言うて、えらい鼻の穴ひろげてはるで」
「なあ。それがキンちゃんのまえでつーよーするかどうかやけど、あやしいもんやで。キンちゃんにニッポン来てもろてのオモテナシやったらわかるけど、向こう行って、むこうからオモテナシ受けるどころか、えらいオミヤゲ、それもコクミンに内緒で、持って行かなアカンのとちゃう。知らんけど」
「情けないハナシやな」