映画 「カメラを止めるな」
「観た?」
「観た」
「最後まで?」
「最後まで」
「で、どやった?」
「まあまあ、面白かった」
「おとーさん、途中で寝てたやろ?」
「ああ、寝てた」
「起こしたんやけど、知ってるか?」
「ああ、言うてたな、『最後まで観らんと面白さはわからん』言うてたな」
「憶えてんねんな」
「我慢して観てたんや。途中チラッと寝てたように思うけど、最後は観てたで」
「おとーさん、どやった?」
「あかんな。わからん。なんであんなんが色々賞を取ったんか、わからん」
「安かったからとちゃう?」
「安かった? ああ、制作費のことか。300万とか言うてたな」
「あれで、だいぶ儲けたたんやろ?」
「それと賞はかんけーないがな」
「まあ、それはそうやけど」
「カメラを止めるないう意味が観るまではわからなんだけど、なんでもえーから、撮せ撮せいう意味やったんやな」
「そういうことやろな」
「あれ、ゾンビやろ?」
「そうや、ゾンビや」
「映画はほんまなら、ゾンビの映画を撮ってそれをお客さんに観せるということなんやろうけど、この映画は、今こんなゾンビ映画を撮ってまんねん、それでいろいろとがちゃがちゃ、あーでもないこーでもない、ここはこーやろ、あのシーンはなんやねん、気合いが入ってないやないか! なにやってんねん! もっと気ィ入れてやらんかい! オノ持った女の子がゾンビと対決する場面やけど、女の子がどうも監督の思い通りならん、それでなんべんも撮り直し、それで女の子がしょげてると、またべつのやつが来て慰める、そうかと思うと、あっちこっち逃げ回る女の子をカメラが後ろからついて回って、そのお尻をえんえんと撮る、なんや、これが「カメラを止めるな」いう意味かい、なんやねんな、そう思うた」
「そうよ、そんな映画やないの。それがおもしろいんやけど、わからん?」
「わからん」
「途中で寝たからや」
「そやろか?」
「しっかり観んと」
「そやなあ、今度はしっかり観るわ」