後悔のあろうはずがない
「後悔のあろうはずない都構想」
「なによそれ?」
「イチローが言うたやろ、記者会見で」
「そんなこと言うてないやろ」
「都構想は言うてないけどな。うしろにいろいろくっつけたらおもろいかな、思て」
「アホなことやめときよ」
「なんでもくっつけたら、おもろいで」
「どんなんがあんの?」
「政財界、一般、マスコミ、タレント、なんでもありや」
「たとえば?」
「奇々怪々政治の世界で言うたろか。『後悔のあろうはずない財務省』『後悔のあろうはずない文科省』『後悔の』、もうなんでもありや」
「こんなんどないや? 『後悔のあろうはずない我が暮らし』『後悔のあろうはずない美人妻』」
「美人妻て、だれのこと?」
「訊くか。言わいでもわかってるくせに」
「教えてよ」
「ママンのことやがな」
「おとーさん! 白状し! おとーさんがこないなわけのわからんこと言うときは、あとでえらい目にあうことが多いからな」
「なにもないがな。ほんまのことや」
「ええわ、泣きついてきても知らんからな」
「殺生やで、なにもないて。けどこれ、今年のあれになるな、なんやったか、年末に決めるやろ、なんとかいうやつ」
「ああ、毎年あるな、お坊さんが書くやつやろ?」
「ちゃうちゃう、あるやろ『おーモーレツ!』みたいなやつ」
「ふるー、なんやそれ、歳知れるで。その年に流行った言葉みたいなやつやろ?」
「そうそう、それそれ。なんやったか、思い出されへん」
「なんやったかな? ・・・そうそう流行語大賞や」
「それそれ、流行語大賞。言うてみたいな」
「言えるもんやったらな」
「イチローかて、そんなことないやろ思うけど、言い切ってしまうのがえらいな」
「おとーさん、言うてごらん」
「やめとくわ」
「そやな」