復活・タイガー・ウッズ
「松山も出てたんやけど、ニッポンでも、松山どころじゃなかったな」
「なんの話?」
「ゴルフ」
「あああれ」
「何年ぶりかいうてたな。ママン、新聞見てくれる?」
「何曜日の新聞?」
「月曜日? は、そうや、休刊日や。火曜日の新聞ある?」
「あったあった、はい」
「ありがと。14年ぶりや。えらい長いことお休みしてたんやな」
「そのあいだ、なにしてたんやろ? 嫌んならんと練習は続けてたいうことやろか?」
「そういうことやろな。長いで、14年。間違いのうあきらめてるな」
「おとーさんやろ? わたしやったら頑張るけどな」
「ママンやったら大丈夫や。おれなんかと根性がちゃうからな」
「14年やからな。考えるな」
「大丈夫、大丈夫。けど、アメリカあんなん好きやな。頂点からドン底、ドン底から頂点いうストーリー」
「いちばんしんどいときやったんかなあ、あの無精ヒゲ生やしてたときの顔、憶えてるわ」
「そうそう、えらい顔してたな、錆び付いた鉄板やがな、マスコミも容赦ないからな。ええときはチヤホヤ、躓いたらよってたかって後ろから押すみたいなことするからな。こんな目にあうんも『いまに見ておれ!』いうて、バネになるんかな」
「みんなからワーワー言われるんは気持ちええんやろな」
「そやな。すぐ諦めるよーな人間には、真似でけん話やな」
「そんなこと言わんと、頑張ってみる気ィはないんかいな」
「ちょっと遅かったな」
「ちょっとて、どれくらいよ?」
「まあ、3年かな」
「3年やったら、たいしたことないやん」
「70過ぎてからの3年は、大っきいぞ」
「やる気ないやん」
「自分で笑うわ」