どう考えても、わからん?
「どう考えても、わからん?」
「なんの話?」
「まあおれのアタマ、あんまりかしこーないことは自分でもわかってることなんやけど、わからん」
「だから、なんの話よ」
「ヤッちゃんの親分がな」
「ヤッちゃんの親分? なんの話よ、急に」
「いやある親分がな、自分の縄張りのショバ代やらみかじめ料を値上げする言うて、縄張りで商売してるもんに言うたんやけど、ところが子分のひとりが、なにを血迷うたんか勝手に、親分はそんなことせえへんのとちゃうか、言い出したんや」
「ヤッちゃんのことはわからんけど、そんなことってあるの?」
「いやあ、おれもくわしいわけやないけど、映画なんかで観ると、勝手に親分に逆らうようなことがあれば、ひどい目にあわされるのがオチやろ思うんやけどな?」
「親分、怒ってるんと違うの?」
「そうやねん、いやいや、そやないねや。なーんも言わんと、子分もこれまでどおりでへーきな顔してんねや。普通やったら親分怒って『なんでお前、勝手なことさらすんじゃい!』言うて、それなりの罰が与えられる思うんやけど、波風ひとつ立たへん」
「わたしもヤッちゃんのことわからんのやけど、わからんから、どないもしょーがないいうことやろな」
「まあまあ、そうでも思わんとしょがないけど。『生きる』いう映画があったけど、あの映画のなかで、左朴全がやった市役所職員役の心境やな、いまは」
「なんなん、それ?」
「まあ、映画観てもろうたほうがいっちゃんええけど」