朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

気分はインディアン

 突然思い立って急ブレーキ急ハンドルで角ハンドルのオート三輪を左折したとき、おれは、後部の荷台に乗っているふたりのことなどまったく考えていなかった。ふたりは何事もなかったように後部の荷台でおとなしくしているものと、それしかおれの頭にはなかった。ふたりを、どこで降ろすか? 山陽本線の高架下を過ぎてすぐに右折すれば山陽本線東海道本線の起点である神戸駅が目の前にあるのに、おれの頭は混乱して、山陽本線兵庫駅まで行ってふたりを降ろすことだけだった。ほかにはなにも考えられなかった。いまこの場所から、山陽本線兵庫駅へ向かおうと思えば、どの道をどう通って行けばいいのか? おれの気持ちに、距離にして30メートルほど前まであったはずのインディアンの気分が、いまでは微塵も感じられなかった。山陽本線兵庫駅がどこだったか思いつかないまま、おれの操縦する角ハンドルのオート三輪はまっすぐ、山の方へ向かって走り続けた。ここは「有馬道」という通りだった。通りの名の通り、この道をまっずぐ進んで平野の交差点からの山道を登って道なりに進めば、そこは温泉地有馬だ。おれはどこへ行こうとしているのか? おれはどこへ向かっているのだろう?