新発見
「ママン、新発見や!」
「なによ、大きな声だして」
「下の広場歩いててわかったんやけどな」
「新発見て、なにか見つけたん?」
「いや、そんなんやない、身体のことやけどな」
「身体のこと? おとーさんの?」
「そう。歩きながらな、手は遊んでるわけやろ、なにもせんと」
「なにもせんと言うて、こうして振ってるやん」
「そら手やのうてウデや」
「まあ、なあ」
「それでな、両方の手をグーパーグーパーしながら歩くんや。なにもせんよりウデの筋肉を使うことになるからちょっとでも運動の足しになるやろ」
「なんなん? それが新発見や言いたいの?」
「いやいや、これやない。グーパーグーパー言うたけどな。グーにも2種類あんねん」
「はー?」
「握ったとき親指をな、手のひらの中に入れるのと外に出すのと、この2種類のことやけど、これをミギヒダリ右左と交互にやるんや」
「こうやろ、こうやろ、簡単やん」
「そら両方とも同じやからだれでもできる。ほら、おれかて簡単や」
「どこが新発見なんよ?」
「左でも右でもええわ。片方の手を親指隠し、もういっぽう、こっちな、これは親指をソト、これをな両方の手で隠しソト、隠しソトと交互にやる、やってごらん、なかなか、あれッ? ママン、簡単にできるやんか」
「簡単や、こんなん。こんなんのどこが新発見なんよ」
「いやあ、おれの言うた新発見はな、このやりかたでやってて気がついたことなんや」
「まだなんかあるんかいな」
「おれがやるから、見ててな。こやろ、こやろ、こやろ、こやろ。ほら、こーなんねん。見て見て。両方の手ェとも親指隠してるやろ?」
「ほんまや、なあ。別々やないとあかんのやろ?」
「そう。間違うてるのは左手やねんけどな」
「けどおとーさん、左利きやろ?」
「そーや、おれ左利きやから左手のほうがわりと器用や思てたんやけど、どうもそんなことない、なんべんかやってみたけど、右手はホッてても勝手に動いてくれるけど、左手は意識して動かさんとウロがきたみたいに間違うんや。けど、意識しててもケッコウ間違うんで、左手、おれが思てたより不器用やな思て、新発見やあ言うたんや」
「そういうことかいな。わかったわ」
「なにが?」
「おとーさんな、左手がぶきよー言うたやろ。左手もそーかも知れんけど、もともと、脳やないブキヨーなんは、違う?」
「そうかもしれん」
「わたしの新発見やな」