将軍綱吉、ツナキチになる
「ママン、昨日ののコーモンさん観た?」
「コーモンさん?」
「水戸黄門や」
「観た? て、おとーさん、一緒に観てたやないの」
「ああ、そやったかな?」
「しっかりしーや、おとーさん。一緒に観てたやないの」
「そーか。毎日のことやから、ごっちゃになってるわ。どんな内容やった?」
「どんな内容やったて、観てたんやろ?」
「どないなないよーやったか、ママン、憶えてるやろ?」
「え? 急に訊かんといてよ。どんなんやったかな?」
「なんやねんママン、しっかりしーやは返すわ」
「面白そーやいうて、イズミヤ行くのずらして最後まで観たんやったけど」
「そーやおとーさん、思い出したわ。将軍さんが出んねん」
「そうそう、将軍さんショーグンさん。何代将軍か知らんけどツナヨッさんがコーモンさんのアドバイスで、商家の若旦那ツナキチに化けて貧しい裏長屋なんかを見てまわるいうストーリーや」
「そやね。主人が紙くず屋のそのヨメさん役で、あの痩せた女優さん、名前知らんけどよー見るよ、うまいやろ。ここんとこ、目の横んとこになんか黒いもん付けてたけど、おとーさん、あれなに?」
「あれ? ママン、知らんか? 頭痛膏薬や。うちのばーさんが頭痛持ちで、よー貼ってたから憶えてるわ」
「へえー、あんなもんで効くんやろか?」
「わからん。おれもばーさんの血ィ引いてるんでときどき頭痛するんで、いっぺん実験で貼ってみるわ、サロンパス」
「効いたら、クスリ服まんですむから、えーな」
「ハナシがえらいみょーなほうに行ってもうたな。戻そか。ショーグンさんや。ツナヨッさん、コーモンさんに言われて、江戸は徳川将軍家のお膝元、そないわけのわからんヤツはおらん、言うてたけど、おったんや。それもショーグンさんに目をかけてもろてた旗本、こいつがこのドラマのいつものパターン、悪商人とタッグを組んでヂアゲをやってるというストーリーで、若旦那に化けたショーグンさんと、貧乏長屋の住人とのやりとりが見せ場になってるんやな」
「あのボーッとした感じのショーグンさんと、あの痩せた女優さんとの掛け合いがマンザイみたいで面白かったね」
「ショーグンさんもええ経験やったやろ」
「コーモンさんのおかげや。行こか、イズミヤ」