朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

人生やり直せるもんなら

「ママン、後悔したことある?」

「あるよゥ。だれかてあるんと違う?」

「そやな。だれかてあるに決まってるわな」

「なんでそんなこと訊くの?」

「いや、新聞のな日曜版にアンケートが載ってたんや」

「どんなアンケート?」

「うん。『人生やり直したいことある?』いうアンケート」

「たいがいの人はやり直したい思てるん違う、知らんけど」

「ところがな、3分の1の33%は『いいえ』やねん。以外やろ」

「ふーん。自分の人生、なんにも後悔することない。満足、マンゾク、いうことやろか?」

「ところがそやないねん。その理由の第一が、『うまいこといかないことがあってもそれも人生』と、言やあ悟るというか達観というか、世の中けっこう『人生の達人』がいてはるんやなと以外やったわ。島倉千代子のオカゲやろか?」

「なに、島倉千代子のオカゲて?」

「歌にあるやろ『人生いろいろ』」

「そーいうこと。2番目はなに?」

「『人生はなるようになる』」

「ちょっとあきらめっぽい言いかたにも聞こえるわ。3番目は?」

「3番目? ああこういう人もやっぱりいてはるんや。『これまでの人生に満足』」

「うらやましいーな。いてはるんや、そんな人が。3番目やったらけっこういてはるんやな。そう。おとーさんはどうなん?」

「おれ? おれはとてもじゃないけどアタマんなか開けて見せたいくらいなもんやけどな、ノーミソの99%はコーカイのタネで詰まってるいうてもええと思うよ」

「ということはやなあ、わたしと一緒になったんもその中に入ってんねんな」

「なに言うてんねん! コワイこと言いな。1%残ってるやろ」

「それがわたしとの結婚いうわけやな」

「そうそう。決まってるやないか。ハナシ変えよか」

「うまいこと言うて。自分が不利になったらいつもこーや」

宮本武蔵、知ってるやろ?」

「知ってるよ。佐々木小次郎やろ」

「巌流島やな」

「武蔵がもう歳とってからのことやけど『五輪の書』とか『独行道』とか、書いたもんが残ってるんやけどそのなかにな、『ワレ、コト二オイテ、コウカイセズ』いう一行があるんやて」

「あ、そう。よー知ってんな、おとーさん」

「コーカイジジイやからな、おれ。コーカイには敏感やねん。けど宮本武蔵、ほんまに書いてるとおり後悔せなんだんやろかとおれは思うんや」

「なんでそんなこと思うの? 本人がそう言うんやったら、それでええんと違う?」

「ああ、それでええんやで。けど、あれほどの人でも、いやあれほどの人やからよけーそうとちゃうかと思うんやけど、もうアタマんなかおれとおんなじでノーミソ、コーカイでいっぱいやったん違うかなー、それで、『こらアカン、こんなこっちゃアカン』思うて、『我れことにおいて後悔せず』と自分の気持ちに踏ん切りをつけはったんちゃうか? そんなこと考えてるんやけどな」

「ごくろーなこっちゃなーおとーさん。それやったら宮本武蔵もおとーさんも、アタマん中おんなじよーに99%コーカイのタネが詰まってて、おんなじやー言いたいの?」

「おんなじて、だれと?」

宮本武蔵

「そんなこと言うてないよ」

「言うてるやないの。アタマん中、99%なんやろ?」

「ああ、そのことか。けどおれはまだコーカイばっかりで、自分の気持ちに踏ん切り、よーつけられんからな」

「しょーもな」