音読のススメ
「ママン」
「なに?」
「ボケぼーしのとっこーやくあるけど、訊く?」
「えーわ。まだボケてないもん」
「ボケてからでは遅いから、ゆーてるんや」
「そしたら聞いてあげよか?」
「聞いてくれるか。とっこーやくはな、音読や」
「オンドク?」
「そう、音読」
「オンドクて、なによ?」
「本でも新聞でもなんでもえー、声出して読む、いうやつ」
「あかんねん。読むの苦手やねん。ちょっと読んだらすぐ眠とうなんねん」
「それでもえーねん。眠とうなったらやめたらえーから、1ぷんでも2ふんでもかまわん」
「そんなんでえーの」
「そう、そんなんでえーんや。やるとやらんはおー違い。やってみることが大事なんや」
「おとーさん、やってんの?」
「ああ、やってみてわかったんや。子供のころ国語の時間なんか、立たされて読まされたことあるやろ。あれ大事やったんやて、いまんなってわかった」
「なんでもえーの?」
「なんでもえー。ちょうどよかった。これな図書館から借りてきた本や」
「ああ、電話あったあの本?」
「そう、ここの図書館には置いてないらしいんで、予約で、中央図書館から送ってもろたんや」
「なにこれ。『読むクスリ』て書いてあるわ」
「これな。もうずいぶんムカシのことやけどな、週刊誌に連載されてたんをずっと読んでたんや。ひとつひとつのハナシが短いんで、ママンが声だして読むんにはちょーどえーわ」
「ふーん。やってみよか?」
「ああ、やってごらん。わかるわ。韓ドラもえーけどな、ボケぼーし、保証するわ」
「おとーさんにそれ言われるとなー。信じてえーかどーか、迷うんや」