繋がった?
「ママン」
「なに?」
「えらい世の中になったで」
「なにかあったん?」
「あったん言うてる場合やないで」
「だから、なにがあったんよ」
「繋がったんや」
「繋がった?」
「ああ、繋がったんや。おれが生きてるうちはこないなことゼッ、タイ、ない思てたんやけどな。おれが甘かったわ」
「そやさかい、なにが繋がったんよ。言わんかいな、はよ」
「言うたろか。けどもったいないような気もするな。けど聞いたら、びっくりするで」
「もええわ。どーせくだらんことやろ。洗濯もん、干すわ」
「繋がったんや。あの世とこの世」
「エッ、なに言うた?」
「あの世とこの世、繋がったんやて」
「えッ? なんやて。あの世とこの世が繋がった? 意味わからんわ」
「あの世、知ってるやろ?」
「知ってるよ。けど、繋がったって意味わからんわ」
「だから、あの世と繋がったいうんは話ができる、いうことやんか」
「おとーさん、あたま大丈夫か。どないしてそんなことができるわけないやん」
「おれに言われても、テレビが言うてたんを言うてるだけやからな」
「テレビが言うてたて、そらドラマとちゃうの」
「いや、そんな感じやなかったで。おれかてそのくらいはわかるわ」
「ほんまかいな? ほんまやったらえらいことやで」
「電話するか?」
「だれに?」
「おねえちゃんによ。知ってるかもしらんで」
「ええわ。やめとくわ。『あんた、なに言うてんの』言われるわ」
「まだ信用してないねんな」
「当たり前やろ。あの世なんかあるわけないのに」
「なんで? ママン言うてたやろ、あの世はどんなとこかな、言うて」
「空想やろ。実際あるなんて、だれかて思てない、思てるよ」
「だから、あったんや、言うてるやろ」
「信じられんわ。なにかの間違いやて。おとーさんのいつものクセ」
「なんや、いつものクセて」
「早とちり」
「早とちりやないて。おとうちゃんおかあちゃんと、話できるんやぞ」
「そこまでわかってるの?」
「そうや。今はそこまでらしいけどな。いつかはおじいちゃんおばあちゃんまで繋げたい言うて、研究してるらしいわ」
「えらいことやないの」
「だから言うたやろ。えらいことやいうて」
「どないしよ」
「ええ話やないか。これまではな、話したい思たら青森県の恐山いうとこまで行って、あのイタコいう人に呼び出してもらわなあかんかったんや。あれ出来る人はほとんどいてないからな、頼んでも何年も待たなあかんかったんや。けどちょくで繋がったんやったら、うれしい話やで」
「ほんまやね。おとーさん、ええ話やないの」