童謡「七つの子」
「この歳になるまで、勘違いしてたわ」
「なんのこと?」
「童謡で『七つの子』いうんがあるやろ」
「知ってるよ。♪カ~ラス♫~なぜ鳴くの~、やろ」
「そうそう。けどママン、歌がうまいな。ソプラノ歌手になったらよかったのに」
「道、間違うたかな」
「いまからでも遅ないで。70歳過ぎてのソプラノ歌手デビューいうたら、話題になるで」
「考えとくわ。話もとに戻すけど、勘違いてなに?」
「有り難う。忘れるとこやった。♫カ~ラ~ス、♫なぜ鳴くの~カラスは」
「おとーさん。もう、ええええ。カラスやのうておとーさんの話、どこへ飛んで行くかわからんから、ええねん。勘違いてなに?」
「それやったらズバッと言うけどな。七つの子いうたら山の古巣にな、七羽の子がおるもんとばっかり思てたんや。ところが今日ラジオ聞いてたら七歳の子やいうんや。ママンはそれ、どない理解してたん」
「わたしは最初から七歳の子や思てたよ」
「けど、おかしいと思わへんか」
「おかしいて、なにがよ」
「カラスの平均寿命が何歳か知らんけど、七歳いうたら立派な大人とちゃうんか、カラスやで」
「そんなこと、考えたこともないわ」
「まあなあ、おれもこれまで考えたことなかったんやけど、この歳になると毎日が日曜日やろ。日韓問題、米中問題、口利き問題、世の中はあれやこれやでうねってるけど、いまのおれにとっちゃこっちのほうが大事なんや」
「カラスの歳のことが?」
「そうそう。鳥のなかでもオウムなんかはえらい長生きするらしいけど、カラスの寿命て、ほんまのこと言うて、どれくらいなんやろ。競馬ウマなんかすごいで。人間の子供やったら頑是ないと形容される三歳から、好きもんのおっちゃんのフトコロに手ェつっこんでカネ稼いでるからな」
「すごいなおとーさんは。ウマとカラスと一緒にして。頭の中どないなってんの」
「子ガラスが七歳やったら、親ガラスは何歳やろ? 人間みたいに、爺さんガラスより婆さんガラスが長生きするんかな。どう思う?」
「もうええわ」