現在人気ナンバーワン
「ママン」
「なに?」
「テレビ観ててな、いま人気ナンバーワンはだれやと思う」
「だれやろ?」
「わからんか?」
「お笑い芸人かなんか?」
「ちゃうな。わからん?」
「わからんわ」
「言うたろか?」
「ほんまはどうでもええんやけどな。おとーさんが言いたそうやから、言うて」
「あの人やんか? いま一番テレビで取り上げられている人。頭に『ム』のつく人」
「む? むやろ?・・・村田英雄は違うやろ。向井理も一時と比べたら、いまひとつやからな。わからんわ」
「わからんか。ヒント。日本人やない」
「日本人やない。わかった。あの人やろ。けどあの人やったら『ブ』やないの?」
「日本語で言えばそうやけどな。それでも当たり。そやろ。えらい人気やろ」
「人気いうんかな、こんなんでも。不人気ナンバーワンとちゃうの」
「そうとも言えるな。けどこの人、もう一人『あ』のつく人を引きずり下ろそう思てヒステリーみたいに躍起になってはるけど、どうもあんまり効果はなさそうやな」
「『あ』のつく人いうたらあの人のことやろ」
「わかるか?」
「わかる」
「けど、これ皮肉な見方やけどな。引きずり下ろそうとして、結果は助けてるようなもんやねん」
「なんで?」
「『ム』のつく人がこれだけテレビに出てワーワー言うてはるお陰で、『あ』のつく人にあんまり矢が飛んでこんやろ。結局、引きずり下ろそうとあれこれやってはるけど、その結果いうたら『あ』のつく人の前に立ちはだかって矢面になってはるみたいなもんや、そう思たらなんかおかしいて、笑うてしまうわ」
「一所懸命汗かいてやってはるんやろうけど、おとーさんみたいに思われたらセがないな」